WCRP日本委 声明文「G7広島サミットを振り返って」を高村外務政務官に提出

戸松理事長ら5人が外務省を訪れ、高村外務政務官に声明文を手渡した(同日本委提供)

世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会の戸松義晴理事長(浄土宗心光院住職)ら5人が10月12日、外務省(東京・千代田区)を訪れ、9月14日に同日本委のウェブサイトで発表した声明文「G7広島サミットを振り返って」を高村正大外務大臣政務官に手渡した。

同日本委は今年5月19日から21日まで開催されたG7広島サミット(主要国首脳会議)を前に、同サミットに宗教者の平和の祈りを込めるとともに、宗教者の役割と行動を確認し、メッセージを発信するため、G7広島サミット「宗教者による祈りとシンポジウム」(同10日)を広島市中区の世界平和記念聖堂(カトリック幟町教会)で実施した。この集いで採択された提言文「G7サミットに向けた宗教者提言~『ヒロシマの心』が導く持続可能な平和をめざして~」を同15日に、首相官邸(東京・千代田区)で岸田文雄首相に提出し、世界の諸課題の解決に向けた宗教者の要望を伝えた。今回の声明文はこれに続くもの。

声明文では、G7サミットが広島で開催され、7カ国の首脳が原爆慰霊碑で祈りを捧げ、原爆資料館を見学し、被爆者と対話したことは、「歴史的に意義深いこと」と説明。平和のメッセージを発信し、世界の関心を広島に向けさせたことで、「核兵器廃絶への機運をより高めた」と評した。

さらに、同日本委が岸田首相に手渡した提言文で、グローバルサウスと呼ばれる新興・途上国との連帯の強化を強調したことに言及。G7広島サミットで発表された首脳宣言の「大小を問わず全ての国の利益のため」という言葉の通り、サミット期間の多くの時間がグローバルサウスとの関係作りに費やされたことを「評価に値する」と述べた。

一方、「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」では、核兵器の悲惨さを実感しながらも核兵器廃絶への意志が見られず、核抑止論を正当化し、核兵器保有の維持を被爆地で認めるという矛盾した姿勢に遺憾の意を表明した。また、ウクライナ情勢に関して、ウクライナへの軍事支援とロシアへの制裁強化の議論に終始したことで敵味方を明確にし、対立をさらに深める流れになったこと、非倫理的とも言える異常な経済格差の是正に向けた具体的なコミットメントの表明がなかったこと、信教の自由が世界的に脅かされている現状に関する議論がなかったことに懸念を示した。

その上で、今回のサミットで貫かれたテーマ「法の支配」が今後、G7の理念の軸となるのであれば、「核兵器を包括的に廃絶に導く厳然とした国際法である核兵器禁止条約への尊重の姿勢を示すべき」と指摘した。そして声明の中で、同日本委は引き続き、G7広島サミットで合意した内容が世界の恒久平和を願う「ヒロシマの心」の実現に着実につながるよう、G7各国の動向に関心を寄せ続けるとともに、「私たち宗教者自身の平和に対する責務を果たしていく」と所信を表明している。

外務省での面会の席上、戸松理事長が声明文を高村政務官に手交。核兵器の廃絶は全ての宗教に共通する願いと強調し、唯一の被爆国として核なき世界の実現に向けた要望を政府に伝えた。これに対し高村政務官は、G7広島サミットの成果として、「第一に、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り、第二に、グローバルサウスの国々をはじめとした国際的なパートナーへの関係強化に向けて、積極的かつ具体的な貢献を打ち出していくことを確認した」と説明。また、日本を取り巻く厳しい国際情勢に触れた上で、「岸田首相の下で、核兵器廃絶に向けた旗を降ろさずにしっかりと進めていくべきだと思う」と語った。

声明『G7広島サミットを振り返って』全文(WCRP/RfP日本委ウェブサイト)