ブラジル教会で「子供の幸せを祈る集い」 全ての命を尊ぶ

今年5月21日に行われた「子供の幸せを祈る集い」(写真提供・ブラジル教会)

この世に生まれて来ることができなかった水子や幼くして亡くなった子供の追悼とともに、今を生きる全ての子供の成長に感謝の思いを捧げる「子供の幸せを祈る集い」が毎年5月に、立正佼成会ブラジル教会で行われている。

キリスト教が市民生活に浸透しているブラジルでは、水子の存在が一般的に認められておらず、弔い、供養する習慣がない。そればかりか、水子に関連する話を出すことさえタブー視されている。そうした中でも、同教会では長年、仏教精神に根差した水子供養を行ってきた。

さらに、18年ほど前からは全ての命を尊ぶために同集いを実施。水子、幼くして亡くなった子供たちの戒名を奉読し、子供の命に対する感謝をつづった回向文を奏上している。また、集いの終盤に行う、日常では話せない胸に秘めた思いを吐露できる、温かな雰囲気の法座が参加者の喜びとなっている。

「いつも大きな感動を覚える集い」と振り返るのは、6年前に元妻が3人目に授かった子供を中絶したチアゴ・タボルダ・リチヴィンスキ・ゴンサウベスさん(44)。当時、妊娠を知らされたゴンサウベスさんは、何度も夫婦で話し合い、妻の仕事を大切にしたいという理由から中絶を選択した。しかし、結論を出した後も、せっかく宿った命を育てたい気持ちと、妻の願いを尊重したい思いで葛藤し、中絶後も、自らの選択で命を絶ち切ったことへの罪の意識で押しつぶされそうになった。

そんな中、教会で水子供養を行っていることを思い出したゴンサウベスさんは、四十九日を迎える頃に、戒名をつけてもらい、供養した。5カ月後には、同集いにも参加。初めは自分の罪を問われるのではないかと不安だったが、法座で自分の体験を話すと、「悲しかったね」と、サンガ(教えの仲間)が温かく寄り添ってくれたことに安心した。

「話せなくてつらい思いを抱えている人は少なくないと思います。集いに参加した誰もが、受け入れてもらっているように感じています。水子を一人の尊い命として、教会でお戒名をつけてもらい、ご供養をしてもらえて、心が軽くなりました。亡くなった子供への追悼となり、きっと思いが届いているはずです」

ゴンサウベスさんは現在、月命日に自宅で亡きわが子の戒名を読み上げ、「今、どこにいるの」「今日はこんなことがあったんだ」と語りかけている。

仲原一嘉教会長は、「親御さんの愛情を受けて成長する子供たちの様子や、子供を亡くしたご家族の大きな喪失感を感じながら回向文を読み上げると、子供が育つというのは大いなるご守護を頂いていることだと改めて実感します。だからこそ、幼くして亡くなった子供への追悼、子供の健やかな成長の両方を祈る大切さがあります」と同集いの意義を語る。

今年も5月21日に真心からの読経供養が行われ、命の尊さがかみしめられた。