第40回庭野平和賞贈呈式 インドの平和活動家 ラジャゴパールP.V.氏が受賞
公益財団法人・庭野平和財団による「第40回庭野平和賞」贈呈式が5月11日、東京・港区の国際文化会館で行われた。対面での開催は、新型コロナウイルス感染症流行の影響を受け、4年ぶりとなった。受賞者は、インドの平和活動家であるラジャゴパールP.V.氏(74)。マハトマ・ガンジーの思想を基に、非暴力に徹した社会活動を展開し、貧しい人々の尊厳と権利を取り戻す大規模な徒歩行進を先導してきた。贈呈式では、庭野日鑛名誉会長から賞状が授与された。
ラジャゴパール氏は1948年、南インドのケーララ州で、ガンジーと共にインドの独立運動に挺身(ていしん)した父親の元に生まれた。そのため、「非暴力」「不服従」のガンジーの精神が幼少期から醸成されていった。
平和活動の原点は、約50年前に行った武装盗賊団(ダコイト)との和平交渉だ。ラジャゴパール氏はサルボダヤ運動の指導者たちと数年をかけて、暴力を用いずに武器の放棄を説得し続け、メンバーの投降に成功した。服役後の社会復帰の手助けも担い、暴力を行使する相手に対しても非暴力が有効であることを証明した。
また、社会の周縁に追いやられている最貧層の人々の状況を打開するため、1980年から地域の青少年リーダーの育成を開始。89年には、25万人の小作農民が参加する協会「エクタ・パリシャド」を創設した。
それを機に、先住民や不可触民を含めた農村部の住民の地権と生活資源の保証を政府に訴えるため、大規模な徒歩行進(フットマーチ)を計画。2007年には2万5000人、12年には10万人と共に数百キロの道のりを行進し、300万人の区画地や農地の獲得、土地改革政策の合意を成し遂げた。
贈呈式では、庭野平和賞委員会のフラミニア・ジョヴァネッリ委員長(ローマ教皇庁「人間開発のための部署」元次官、NPO団体オ・ヴィヴェイロ・オンルス会長)が選考結果を報告し、庭野名誉会長からラジャゴパール氏に賞状と、顕彰メダル、賞金2000万円(目録)が贈呈された。
この後、庭野名誉会長があいさつに立った。庭野会長は、ラジャゴパール氏の活動に触れて、仏教の説く「地涌(じゆ)の菩薩」を想起したと話し、大地から湧き出て仏の法を求め、黙々と精進する菩薩に、釈尊が娑婆世界の救いを任せたように、人間の問題は人間自身が解決すべきであり、自らの責任として解決に取り組まなければいけないと述べた。
また、世の中が良くなるように努力する人が大地から湧きだすように次々と現れ、連帯していくことで、本当の平和は実現されると強調。「ラジャゴパール氏はまさにそうした『地涌の菩薩』を育ててこられたのだと受けとめています。本質的な解決に導いていくには、遠回りのようでも人材の育成が欠かせません。特に若者は、未来への光であり、新たな発想を基にした創造的な展開が期待できます」と述べ、受賞者の功績をたたえた。
続いて、永岡桂子文部科学大臣(伯井美徳文部科学審議官代読)、公益財団法人日本宗教連盟の宍野史生理事長(神道扶桑教管長)が祝意を表した。
次いで、ラジャゴパール氏が記念講演。氏は冒頭、受賞の喜びと活動を共にする仲間、支えてくれる家族への感謝を伝えた。その上で、これまでの自身の活動を踏まえ、平和構築のため取り組んできた「非暴力統治」「非暴力社会行動」「非暴力経済」「非暴力教育」の4項目を紹介。この中の非暴力教育では、暴力性を増幅させるような娯楽ツール、ソーシャルメディアなどの影響によって、暴力を行使すれば目的を達成できると、「武力への信頼」を強めている昨今の若者の状況に触れ、自ら平和を築く大切さを学べるように、学校内外での平和学習を奨励していると説明した。さらに、国家や州政府に対しても、非暴力教育を促進するための「平和省(平和局)」の創設を提唱していると語った。