アイヌの里で「共生」を学ぶ 新宗連青年会「ユースフォーラム2023」
白老町の「ウポポイ」でアイヌの伝統、文化を学ぶ
翌23日、参加者は国立アイヌ民族博物館などがある「ウポポイ(民族共生象徴空間)」(白老町)を訪問。川上、楢木両氏も同行した。参加者は班ごとに分かれ、伝統芸能の鑑賞、体験学習を通じてアイヌの文化や歴史について理解を深めた。
「ウコウク(座り歌)」の体験コーナーには、酒や供物を入れる円柱状の容器「シントコ」のふたを手のひらでたたき、アイヌ語の歌を輪唱する青年たちの姿があった。講師が歌い始めると、それまでメモを取っていた参加者は手を止めた。アイヌ文化に活字はなく、全てが口伝で行われるからだ。歌声から歌詞とメロディーを聞き取って後に続く。歌声の節回しや発音は、一人ひとり微妙に違う。その“違い”が歌声として混ざり合い、輪唱が始まると、寄せては返す波のように旋律がうねり、歌い手の心に高揚感が湧き立つ。
この体験後、参加者の男性(28)=立正佼成会仙台教会=は、ユースフォーラムのテーマにある「共生」について「ヒントを得た!」と笑顔で語った。「歌に自信がない時は仲間を頼り、〈任せろ!〉と思える場面では声に力を込めて自分が引っ張る。それを繰り返すうちに一体感が出て、みんなで楽しみを分かち合うことができました。輪唱も、会話も、そして生きていくことも、一人ではできません。相手を知ろう、理解しよう、思いやろうという気持ちが、人と人が共に生きていく上で大切だと改めて感じました」。
最後に一行は慰霊施設を訪れた。明治時代以降、研究者がアイヌの人々の意にかかわらず、発掘・収集したアイヌ民族の人骨が収められている。一行は教団別の献花の後、黙とうを捧げた。
同フォーラムを終え、参加者の女性(20)=善隣教=は、「北海道の先住民族である『アイヌ』には、北海道、樺太、千島、東北など、それぞれに違った伝統と文化を持つ民族がいることを初めて知りました。思えば、新宗連は当たり前のように、異なる宗教宗派を持つ人たちが、互いの信仰の違いを認め合い、集っています。それは、新宗連の先輩方が、日ごろから手本を示してくれていたから。違いを知り、認め、尊重するという意識で日常の生活を送り、少しずつでもいいから、その姿を全世代で共有していくことが、誰もが暮らしやすい地域、社会をつくるのだと思います」と話す。
2019年、法律として初めて、アイヌ民族を「先住民族」と明記した「アイヌ施策推進法」が成立した。しかし、それぞれに独自の文化や風習を持ち、言語も異なる各地のアイヌがひとくくりに扱われているとの問題点を指摘する声もある。楢木氏は、「国立アイヌ民族資料館には、樺太アイヌの装飾品が展示されていますが、説明に『樺太アイヌ』の文字はありません。慰霊施設にも、樺太アイヌの遺骨は納められてはいないのです」と語る。当事者の尊厳を守るための課題は、いまだ残されている。