ローマ教皇フランシスコが退院(海外通信・バチカン支局)

ローマ教皇フランシスコは4月1日、ローマ市内のジェメッリ(カトリック総合病院)から退院した。同日朝、教皇はジェメッリの出口で待つ報道関係者や信徒にあいさつした後、昨夜に4歳の女の子を亡くした夫婦に声をかけ、自身の胸に顔を埋めて嘆く母親を慰めた。その後、バチカンにある自身の居所「聖マルタの家」に帰着した。

翌2日、教皇は、キリストが自身の受難、死を通して復活したことを追憶する「聖週間」の始まりを告げる「枝の祝日」に際するバチカンでのミサに出席。司式は一枢機卿に委託したが、教皇は荘厳な雰囲気の中で祭壇上に着座し、説教した。この中で、十字架上で息を引き取る前にキリストが発した「神よ、なぜ、私を見捨てられたのか」という断末魔の叫びに言及。人間となった神の極限的な苦の体験によって人間が救われたという十字架の逆説を説き、人間社会の中で見捨てられ、不正義を強いられ、苦しんでいる人々への配慮を促した。

今後、教皇は聖週間の全行事に参加する予定だ。

これに先立つ3月29日、教皇はバチカン広場で行われる水曜日恒例の一般謁見(えっけん)で元気な姿を見せていた。しかし、バチカンのマテオ・ブルーニ報道官は同日午後、「教皇が定期的な検診でジェメッリに赴いた」と公表。バチカン記者室の報道関係者からは、教皇が救急車で病院に到着した事実、数日間の予定を全てキャンセルしていることが挙げられた。教皇は若い頃に肺の疾患を患い、2021年にはジェメッリで結腸の手術を受け、現在も膝の関節痛に悩まされている。

29日夜、ブルーニ報道官は「教皇は数日にわたり呼吸困難を訴えており、呼吸器感染症であると判明した。しかし、新型コロナウイルスには感染していない」と検診の結果を発表。翌30日午前には、「教皇は夜間も良く眠り」「病状は段階的に良くなっており、予定通り治療は続けられている」と述べ、朝食後には日刊紙を読み、職務を再開し、昼食前には礼拝堂で祈り、聖体を拝領したと伝えた。

「ジェメッリ」でがんと闘病する子供たちの病棟を訪問した教皇(バチカンメディア提供)

さらに、30日夜には、「ウイルスによる気管支の感染」という詳しい診断結果と、抗生物質による治療で病状が大きく回復し、「数日中の退院が予想される」と報告。「教皇は医療関係者たちとの夕食でピッツァを食した」とも明かした。

31日には、「今朝の検診結果を考慮」し、「教皇の退院は明日(4月1日)に予定されている」と公表。同日午後には、ジェメッリでがんとの闘病生活を送る子供たちの病棟を訪問し、彼らを慰めると同時に、一人の幼児に洗礼を授けた。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)