台湾で「第6回仏教とキリスト教シンポジウム」 社会環境や地球環境について論議深める

シンポジウムでは、地球環境など現代の諸問題について宗教的見地から意見が交わされた。写真は、スピーチに立つ深田氏

「第6回仏教とキリスト教シンポジウム」が4月26日から28日まで、台湾の法鼓文理學院で開催された。これに先立つ24日には輔仁カトリック大學で、29日には靜󠄅宜大學(「靜󠄅」の偏は、青)で同シンポジウムの特別プログラムが行われた。

今回のシンポジウムは、カトリックの在家運動体である「フォコラーレ運動」(本部・ローマ)、イタリアのソフィア大学、会場となった台湾の3大学が共催。イタリア、日本、タイ、韓国、米国などで活動する同運動のメンバー、仏教指導者、キリスト教指導者ら約90人が参加した。日本の仏教界からは天台宗、日蓮宗、北法相宗の代表者、立正佼成会から庭野統弘・学林学長、深田伊佐夫・習学部主幹らが出席した。

同シンポジウムは2004年にイタリアで第1回が行われ、以降、日本やタイで開催されてきた。6回目の今回は、27日に『現代世界の苦しみに対する仏教徒とキリスト教徒の答え』を、28日に『諸宗教と環境危機の課題』をテーマに、宗教的見地から世界における社会環境や地球環境の諸問題を論議した。

開会式では、同運動諸宗教対話センター共同責任者のロベルト・カタラーノ師とリタ・ムッサレム師らがあいさつ。この後、宗教・宗派別の祈りが捧げられた。本会は、深田氏を導師に「妙法蓮華経如来寿量品」の読誦(どくじゅ)を行った。

28日の分科会には深田氏がパネリストの一人として出席し、『宗教者による環境問題への取り組み』と題して発表に立った。この中で、地球環境の保全には、仏教の「縁起観」をはじめ、「共生」「少欲知足」の教えや倫理観が有効であると説明。一人ひとりが自然環境に生かされていることを自覚し、物質的欲求を抑えて心を満たす「足るを知る」を意識して生活を送り、その精神を広めていくことが大事と述べた。

このほか、『仏教とキリスト教の伝統に見られる自然観と環境観』をテーマにした分科会では、同運動のメンバーで、新技術エネルギーに関する政府機関の研究員であるルカ・フィオラーニ物理学博士が聖書の解釈に言及。キリスト教圏では、神の似姿とされる人間は神の被造物の最上位であるとされ、自然を制御できるという考えがなされることもあったが、自然も人間も同じ被造物であって優劣はなく、全てを尊び、共生していくべきとする見解を強調した。

29日、『人生への別れと環境危機に対するポジティブな見解』をテーマに特別プログラムが行われ、その中の分科会では、庭野学長が『苦しみと環境の危機に対するポジティブな考え方――立正佼成会の歴史、目的、活動を通して』と題して発表した。

庭野学長は、法華経では、さまざまな現象から自らの心を省みる重要性が説かれ、苦しみも救いの糸口になると捉えていくアプローチが示されていると説明。その上で、本会では、苦難や逆境も「仏の慈悲」と受けとめて、自らを見つめ直す契機とし、他者の幸せを願えるようになる実践を大切にしていると詳述した。さらに、そうした心を養うため、「ご供養」「導き・手どり・法座」「ご法の習学」という基本信行の実践に全会員で取り組んでいることを紹介。読経供養と法座の意義や、それぞれの成長につながる功徳を解説した。