IPCR国際セミナー2022 日本、中国、韓国の宗教者が集う

開会式で、あいさつに立つ世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会の戸松義晴理事長

『東北アジア平和共同体構築のための課題』を総合テーマにした韓国宗教平和国際事業団(IPCR)の国際セミナーが2月11日、韓国・ソウル市内のホテルを会場に、オンラインを併用して開催された。日本、中国、韓国の宗教指導者や研究者など72人が参集。日本から世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会の戸松義晴理事長(浄土宗心光院住職)、篠原祥哲事務局長らが出席した。

同セミナーは日中韓3カ国の宗教者や学者らが集い、東北アジア平和共同体構築に向け、具体的な方策や課題解決について議論を交わすもの。2009年から毎年実施されている。

開会式では、各国代表者があいさつに立った。この中で戸松理事長は、政治的緊張や気候変動など東北アジアを取り巻く課題に触れ、自然との調和を大事にしてきたアジアの価値観や宗教が、問題解決に力を発揮できると強調。同セミナーを通じて得た知見を3カ国の宗教者がそれぞれの活動の場に生かして頂きたいと期待を寄せた。

第1セッションでは、『アジア太平洋運命共同体の構築に、仏教の積極的な役割を十分に発揮する』をテーマに中国宗教者和平委員会(CCRP)の崇化(チュンファ)委員(雲南省仏教協会副会長)が発題。唐宋時代から南アジアや東南アジア諸国と交流を深めてきた雲南省の仏教史とその功績を紹介し、仏教の調和精神を生かして、アジア太平洋地域に繁栄と安定をもたらす共同体の構築を提言した。

第2セッションでは、『アジア学院における「人と自然と神との対話」』をテーマに学校法人アジア学院アジア農村指導者養成専門学校の荒川朋子校長が発題。「真の対話(生きた対話・人間らしい対話)」とは、素の人格をさらけ出した、心から発せられる正直な言葉と態度で行われる対話であると説明し、人間は真の対話を通して自他の「人格」に出合い、共に成長することができると述べた。また、農業は神や自然との対話であると指摘し、日々わずかでも自然に触れることで人間は生命の尊さに気づかされるとの見解を示した。

『気候危機時代の宗教』をテーマにした第3セッションで発題した韓国宗教人平和会議(KCRP)のユ・ジョンギル生命平和委員長は、果てしない経済成長の追求や人間中心主義が深刻な気候危機を引き起こすと指摘。環境問題の解決に向けて宗教者の最初の実践は「感謝」であると述べ、天地自然の恵みと隣人への感謝を回復することが、気候危機を回避する道を歩む動力になると訴えた。

パネル討議で発表する篠原祥哲同日本委事務局長

篠原事務局長は同セッションの討議で、相互扶助を基にしたコミュニティーの必要性に言及。「アジア地域全体を『環境共同体』として捉え直すグローバルな視点の確立が急務であり、そのためにも中韓日の宗教者が信頼を育み、協力していくことが今後さらに重要になる」と強調した。