互いの尊さ、弱さを見つめて 「これからの布教に向かって~はじめの一歩〈尊厳の学び〉~」
立正佼成会の会員一人ひとりの心の奥にある思いを大切にした対話を深めるためのワークショップ「これからの布教に向かって~はじめの一歩〈尊厳の学び〉~」が昨年12月17日、法輪閣(東京・杉並区)を会場に開催された。杉並、中野の両教会の教会長と教会役員が、新型コロナウイルスの感染対策を施した法輪閣に参集。会場の模様はインターネットでライブ配信され、全国の教会長、教会役員らが視聴を通して参加した。
冒頭、あいさつに立った國富敬二理事長は、今回の学びを踏まえ、令和五年次の「布教方針」を基に各教会で対話を重ね、「互いに信仰の原点を振り返りながら、社会の苦に分け入るための布教の在り方などについて語り合いを進めて頂きたい」と期待を寄せた。
続いて、庭野光祥次代会長が登壇し、昨年5月に今回の講師を務めるジェフリー・メンセンディーク桜美林大学准教授のワークショップに参加したことを報告。「尊厳の学び」を深めることで得た自身の気づきを伝え、取り組みを通した学びが「信仰を深め、教えを生きようとする私たちの行く道を照らす明かりの役割を果たしてくれる」と述べた。
この後、メンセンディーク氏が『人の内なる力を引き出すディグニティ・モデルの紹介』を中心に「尊厳ワークショップ」を行った。この中で、メンセンディーク氏は、世界の紛争解決に携わる米国の心理学者ドナ・ヒックスが、「尊厳」とは「生きるものすべての価値と弱さを認めて受け入れることからくる内面の平安」と定義したことを紹介。人間は、他者から尊厳を侵害されると心に深い傷を負い、生きる力を奪われてしまうと自死につながるケースさえあると語った。その上で、「アイデンティティの受容」「公平性」など「尊厳の10の要素」を紹介し、自他の尊厳を守ることを意識して日常生活を送る大切さを伝えた。
さらに、「挑発に乗る」「面子(メンツ)を保つ」といった人間の持つ“弱さ”を表した「尊厳を侵害する10の誘惑」を紹介。人間はこれまで、集団を形成して野生世界を生き抜いてきた一方、脅威を感じると衝動的に他者の尊厳を侵害して自己を守る本能を持っていると解説し、広い視野で世界と関わる自分を眺め、自制心を働かせて尊厳の侵害を防ぐことの重要性を、自身のエピソードを交えながら述べた。
また、自らの尊厳は誰にも奪えないと自覚した人は力強く生きることができ、自分も他者も同じように思いやって触れ合いを重ねられると強調。「皆がありのままの自分を表現し、大切にされていると実感できる『尊厳の文化』を一緒に育てていきましょう」と呼びかけた。
この後、教会ごとの分かち合いの時間が持たれ、参加者はワークショップを通した学びや感想を発表し合った。
最後にあいさつに立った光祥次代会長は、自らの体験を踏まえながら、人間は無意識のうちに人を傷つけたり、不安にさせたりしていることがあると述懐。そうした人間の「弱さ」をそのまま受け入れたのが釈尊であり、だからこそ法華経の『方便品』に説かれる五千起去(ごせんきこ)で去っていく人たちに、何も言わず引き留めなかったのではないかと述べた。また、今回の学びを通してそれぞれが感じていることを大切にし、「教会の皆さまと一緒に、佼成会の新しい布教について考えていきたい」と今後の歩みの展望を語った。