核兵器の保有は非倫理――教皇が各国大使にアピール(海外通信・バチカン支局)
また、政情不安の続くミャンマーを「2年間にわたり、暴力、苦痛、死に直面している」と称し、同国に「特別なる配慮」を表明。「国際社会が和解に向けたプロセスを具現化し、全ての(紛争)関係者たちに対し、あの愛されるべき国民に希望を再獲得させるための対話を選択するように」と奨励した。
朝鮮半島の状況に関しては、「善意と協調への努力を忘れないように」とアピールしながら、「強く望まれている和平と繁栄が構築されるように」と願った。
多くの国々で、女性が差別や暴力を受けており、就学、雇用、社会的な活躍、医療や食料へのアクセスを禁じられていると述べ、「平和が、まず生命の尊重を要求する」と主張し、「中絶と死刑制度の廃止」を訴えた。
特に、女性の尊厳性を求める抗議運動が続くイランに言及し、「死刑が国家による正義(司法)の執行という理由で行われてはならない。死刑は、抑止力となったり、犠牲者のための正義(代価)として提供されたりすることなく、復讐(ふくしゅう)への渇望を助長するだけだ」と伝えた。これまでも教皇は、「世界各国で、死刑制度は廃止されなければならない」と訴えている。
最後に、「政治が紛争のために宗教を利用している」と糾弾し、紛争は「人間の心の不均衡から生まれる」と語った。そして、再びウクライナ侵攻について触れ、「多国間システム(国連)に関する深い再検討」を要請した。国連が、世界の人々の必要性と感受性を代表する機関であるためには、特定の国民を犠牲にしながら何かを成し遂げることを避けなければならないと主張。「同盟国によるブロックを構築するのではなく、全ての国による対話を可能とする」ことの大切さを伝えた。
この教皇の発言は、国連、特に、安全保障理事会での拒否権行使に関する「深い改革」を要請している。平和構築のためには、他国の「自由、(領土の)保全、安全保障」が尊重されなければならないが、この視点から教皇は、「世界の多くの地域において、民主主義が弱体化してきている」ことへの憂慮を表した。なぜなら、近年、独裁政権に近い君主国家の数が増えてきているからだ。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)