名誉教皇ベネディクト十六世の葬儀(海外通信・バチカン支局)
終わりを告げた“2教皇の共存”
昨年12月31日に逝去した名誉教皇ベネディクト十六世の葬儀が1月5日、バチカン広場でローマ教皇フランシスコの司式により挙行された。ミサの司式は、膝に疾患のある教皇の名代として、枢機卿団団長のジョバンニ・バッティスタ・レ枢機卿が担当。枢機卿130人、司教400人、司祭3700人が合同司式した。バチカン広場には信徒5万人が参集し、立正佼成会から川本貢市時務部部長が庭野日鑛会長の哀悼のメッセージを携えて参列した。
午前8時45分、名誉教皇の遺体を納めた棺(ひつぎ)が広場に入場すると、参列者から拍手が沸き上がった。広場中央の祭壇前に安置された棺の上には、開かれた聖書が置かれた。
参列者たちが「ロザリオの祈り」を唱えた後、現教皇が車いすで入場し、葬儀ミサを開始した。ミサの説教で現教皇は、「主なるキリストは、生まれてくるさまざまな不理解を乗り越えて、(相手を)理解し、受け入れ、希望を持たせ、約束する能力を持つ柔和さを与えてくださる」と述べた。柔和さ、傾聴という徳は、ベネディクト十六世が有した特別なる能力であった。
さらに、「カトリック教会という共同体として、キリストの足跡をたどり、私たちの兄弟(名誉教皇)を彼の手中に託すが、名誉教皇が生涯を通して公布し、証した福音書を灯油とする燈明(とうみょう)を、神の慈悲の手中に見いだすことができますように」とも祈った。そして、「ここに参集した神に忠実な民(信徒)は、その民の司牧者(指導者・名誉教皇)の生命に付き添い、神に託す」と惜別の辞を述べた。
名誉教皇は生前、自らの葬儀を簡素にするよう言葉を残していた。また、彼が在位教皇でないこともあり、葬儀の公式使節団はイタリアとドイツに限られ、約10カ国から参列に訪れた首脳や王家の代表者たちは個人参加とされた。教皇をはじめバチカン諸機関、市国内の諸施設では、葬儀への参加は許可されたが、通常業務を継続するよう指示が出された。半旗は掲げられた。
世界のキリスト教会からは、世界教会協議会(WCC)、コンスタンティノープル(現トルコ・イスタンブール)の正教エキュメニカル総主教区、各国の正教会、英国国教会、聖公会、プロテスタント諸教会などから多くの使節団が参列。ウクライナ侵攻を続けるロシアの正教会からは、モスクワ総主教区外務部長のアントニー・ヴォロコラムスク大主教が出席した。