KAICIID創設10周年が祝われる(海外通信・バチカン支局)

「アブドッラー国王宗教・文化間対話のための国際センター」(KAICIID)は12月6日、事務局のあるポルトガルのリスボン(今年6月にオーストリアのウィーンから移転)で創設10周年を祝う式典を開催した。ポルトガルのマルセロ・レベロ・デ・ソウザ大統領、ジョアオ・ゴメス・クラビーニョ外相が出席。各国の市民社会、諸宗教、外交や政界の指導者らが参列した。

式典でスピーチしたKAICIIDのズハイル・アルタルティ事務総長は、「現代世界における恒常的平和の構築手段として、諸宗教指導者と政策担当者の間に対話と理解の機会を提供していく」ことが、同センターの新しい道程だと説明した。

KAICIIDは、サウジアラビアのアブドッラー国王の構想により、サウジアラビア、オーストリア、スペイン、バチカン市国(オブザーバー)による政府間のイニシアチブとして2012年に創設された。上記4カ国で構成される「締約国評議会」、仏教、キリスト教、ヒンドゥー教、イスラーム、ユダヤ教の代表者で構成される「理事会」、世界の主要宗教と文化伝統を代表する60人の指導者で構成される「諮問フォーラム」で組織される。立正佼成会からは、庭野光祥次代会長が理事を務める。

2013年、スペイン・マドリード市で開催されたKAICIIDの第2回理事会。光祥次代会長が出席し、世界の紛争和解に対する取り組みなどについて討議した

KAICIIDの目的は、諸宗教指導者、政策担当者、専門家を同じ対話のテーブルに着かせ、紛争の回避・解決、相互尊敬と宗教・文化間の理解促進など、世界レベルでの問題や挑戦に対して共通した解決策を見いだし、貢献すること。諸宗教の共同体に対しては、(政治)政策、人権、持続性のある発展などに関する知識と技能を模索する場を、政策担当者に対しては、宗教、諸宗教間対話、内包(受け入れ、寛容)などについての理解を促進する機会を提供している。

こうした取り組みを推進するため、KAICIIDは、世界に散在する共同体で平和促進活動を展開する指導者たちを奨励して結び付ける「KAICIIDの仲間プログラム」や、欧州大陸の諸宗教指導者、政策担当者、専門家による「政策に関する対話の欧州フォーラム」、弱い立場にある共同体を強化し、ヘイトスピーチや暴力、迫害に立ち向かうための訓練を実行するイニシアチブなどを展開している。「KAICIIDは、対話が持つ一致へ向けた力を信じている。われわれのユニークな使命と諸宗教間対話、熟練した諸宗教指導者で構成される理事会が、世界最良の宗教指導者と宗教制度を巻き込んで世界平和を促進していく」とアルタルティ事務総長は言う。

創設10周年の節目を迎えたKAICIIDは、アフリカ統一機構(OAU)、東南アジア諸国連合(ASEAN)、欧州連合(EU)、国連「文明の同盟」(UNAOC)、国連教育科学文化機関(ユネスコ)などを対話のパートナーとしながら、創設の精神を実現していくために、世界平和の構築を最終目的として、世界の宗教界と政界の間でより深い理解と協調を求める活動を展開している。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)