WCRP国際委、日本委 「戦争を超え、和解へ」諸宗教平和円卓会議 第1回を東京で開催

会議には、紛争地域の宗教者が参集。和解と平和に向けた宗教者の役割について話し合った(写真は全てWCRP/RfP日本委提供)

世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)国際委員会と同日本委員会による「『戦争を超え、和解へ』諸宗教平和円卓会議」の第1回東京平和円卓会議(WCRP/RfP国際活動支援議員懇談会、国際IC=イニシアティブズ・オブ・チェンジ=推進議員連盟、国際IC日本協会後援)が9月21日から23日まで、東京・新宿区のハイアットリージェンシー東京で開催された。同国際委のアッザ・カラム事務総長をはじめ、各国の諸宗教評議会(IRC=国内委員会)の代表者、紛争地域の宗教者、政府関係者ら25カ国から約110人(オンラインでの参加者含む)が参加。立正佼成会から、同日本委会長を務める庭野日鑛会長、同国際共同議長を務める庭野光祥次代会長、同日本委理事の國富敬二理事長らが出席した。

紛争地域の宗教者、政府関係者ら約110人が参加

同会議は、戦争・暴力下にある国々の宗教指導者が一堂に会し、紛争後の宗教者の役割と和解に向けた対話を促進するとともに、諸問題の解決に向けた具体的な道筋を明確にするもの。同国際委の執行委員会とワールドカウンシル(国際役員会)を経て、今年6月に実施が決まり、紛争地域から一定の距離があって「安心して意見交換できる場」として東京が最初の開催地に選ばれた。今回の会議には、紛争当事国のブルキナファソ、エチオピア、ミャンマー、ロシア、南スーダン、シリア、ウクライナの宗教者らが集い、同日本委員会が受け入れを担った。

21日の開会式では、同日本委の黒住宗道理事(黒住教教主)と大西英玄理事(北法相宗音羽山清水寺成就院住職)による諸宗教の祈りに続き、庭野会長が歓迎挨拶を行った。

この中で庭野会長は、仏教の縁起の教えに言及し、地球上の全ての物事は、常に関連・依存し合っていると明示。それは自他一体を意味し、その一体感から生まれる人間としての自然な慈悲や愛が、諸宗教による活動の原点と述べた。

開会式で歓迎挨拶を述べた庭野会長は、諸宗教者の叡智(えいち)によって、会議が実りあるものになるように期待を寄せた

その上で、平和に向けた諸宗教間対話・協力は、国際社会の安定を築くための最も現実的で、重要なものと説明。「一人の宗教者として、現実の苦悩を分かち合い、問題の本質を見つめながら、世界を調和に導く一筋の光を灯(とも)していけるよう、皆さまと手を携えて前進してまいりたい」と語った。

次いで、同国際共同議長を務めるシェイク・アブドラ・ビン・バイヤ師(アブダビ平和フォーラム会長、録画映像)とエマニュエル府主教(カルケドンのゲロン・メトロポリス管区長)、ヴィヌ・アラム博士(シャンティ・アシュラム会長、録画映像)、同国際共同会長のバイ・サヒブ・モヒンダ・シン師(グル・ナナク・ニシュカム・セワク・ジャタ会長、録画映像)、WCRP/RfP国際活動支援議員懇談会共同代表の岡田克也氏(元外務大臣)が開会挨拶を述べた。

この後、23日まで三つのセッションとグループディスカッションなどが行われた。

このうち、『和解に向けた諸宗教によるアプローチ』をテーマにしたセッションⅡでは、4地域委員会の代表者がスピーチした。

WCRP/RfPアフリカ宗教指導者評議会共同議長のアルバート・チャマ博士(中央アフリカ教区大主教・首座主教)は、アフリカのある国で対立関係にあった大統領と野党との和解の取り組みを詳述。両者の意見を個別に聞き、困難な状況に置かれる国民から見聞きしたことを伝えながら和解の必要性を訴え続けたことで、両者が歩み寄るようになったと説明した。たとえ困難な状況であっても真摯(しんし)に取り組むことで少しずつ改善していくと述べ、「宗教指導者は、世界的にとても重要な役割を担っている」と語った。

また、アジア宗教者平和会議(ACRP)事務総長の篠原祥哲氏は、ACRPが取り組む「フラッグシップ・プロジェクト(重点実施事業)」を紹介した。このうちの「平和構築と和解」として、日中韓によるセミナーや交流会などを通して対話の機会を設け、信頼醸成に努めている現状を語った。

セッションⅢは、『諸宗教人道主義――諸宗教人道基金の事例から』と題し、同国際委の諸宗教人道支援基金から資金援助を受けた組織の代表4人が、活動事例を発表。DV(ドメスティック・バイオレンス)被害を受けた女性や子供への支援、コロナ禍で仕事を失った人々への就労機会の創出、紛争地域での教育の提供や心理ケアサポートといった取り組みの内容と成果が報告された。

閉会式では、同日本委理事長の戸松義晴師(浄土宗心光院住職)、国際IC日本協会会長の藤田幸久氏、光祥次代会長があいさつに立った。

この中で、光祥次代会長は、釈尊の言葉を紹介し、他者を慈しむ精神によって成り立つ社会をつくる努力をするのが宗教者の務めと述べ、そのためには「譲る心」が大切と指摘した。丸木橋の両端から歩いてきた2人が真ん中で対面し、先に渡ることを互いに主張して2人とも橋から落ちるケースもあるとの例を挙げ、「譲る」ことは信念を曲げることではなく、行為の上で譲ることと説明。「こだわりを横に置き、一度相手の立場に立って問題を眺めてみる生き方ができれば、世界は少しずつ、けれど確実に変わる」と語った。

さらに、WCRP/RfPの歴史を振り返りながら、世界に山積する諸問題の解決に向けた宗教者の取り組みは、すぐに効果が出ることはなく、気の遠くなる挑戦だが、だからこそ久遠の神仏を信じる「私たち宗教者にその役割が与えられている」と強調。「長い旅路を、これからも皆さまとご一緒したい」と語った。

この後、同会議の声明文が参加者によって読み上げられた。この中で、「癒(いや)しと赦(ゆる)しの必要性、およびその憲章に基づき、暴力の連鎖の再発を防ぐため、すべての関係者が長期的な和解のプロセスに取り組むこと」「諸宗教平和円卓会議を継続し、紛争のすべての側から宗教指導者を招集し、知恵を共有し、諸宗教間の協力と平和を構築すること」「私たちすべてが、人間の命の神聖さとすべての人々への愛を育み続けることが不可欠であると認めること」が掲げられた。

会議では、紛争の解決に向け、宗教者による違いを超えた対話の取り組みを続けることを確認した