悩みを力に、共に一歩前へ 第2回「仏教精神に学ぶ経営者の集い」 庭野会長が登壇
『感謝で協創~新しい経営哲学の創造をめざそう~』をテーマに、第2回「仏教精神に学ぶ経営者の集い」が9月17日、対面とオンラインを併用した“ハイブリッド形式”で開催された。仏教精神を生かした経営を目指す立正佼成会会員(有志)のネットワーク「六花(りっか)の会」によるもの。新型コロナウイルス感染症対策を施した大聖堂(東京・杉並区)には、東京近郊の教会から企業経営者や個人事業主、起業や経営を志す会員93人が参集した。また、集いの様子はオンライン中継され、地方在住の会員180人が動画の視聴を通じて参加した。集いでは、庭野日鑛会長が登壇し、さまざまな仏典をひも解きながら経営や日常生活に生かせる仏教精神について語った。
「六花の会」は教団創立八十周年記念事業として、2018年に大聖堂で行われた第1回集いを機に発足。教会や支教区単位で「仏教経営者塾」を開催し、庭野日敬開祖と京セラの故・稲盛和夫名誉会長から薫陶を受け、多くの企業再建に携わった故・福永正三氏(滋賀教会会員)の教えを基に、学びや交流を深めてきた。
一昨年からはオンライン研修を通し、コロナ禍による経済への影響が深刻化する中、経営者同士で悩みを分かち合ってきた。同集いは、コロナ禍という苦境に共に立ち向かう従業員、また、顧客や取引先といった周囲の支えに感謝するとともに、仲間と協力し合う中で一人ひとりが仏教精神に基づく経営哲学を確立することが目的。
当日は、「六花の会」の活動を紹介する映像の上映、同会顧問の國富敬二理事長のあいさつに続き、旅行会社を営む男性会員(58)=品川教会渉外部長=と、子育て支援や保育事業を営む法人の取締役を務める女性会員(51)=小田原教会=が「体験の分かち合い」を行った。この中で、男性会員は、旅行会社を設立して以来、仏教経営者塾での学びを生かして事業に取り組んできたが、一昨年以降のコロナ禍で一時は業績が9割減まで落ち込んだと告白。庭野開祖の教えをまとめた「経営者心得帖」を指針に、苦労の中にこそ新しい創造、喜びがあると信じて、魅力的な旅行の提案に努めるほか、災害時に役立つ防災用品を紹介するなど新たな挑戦を始め、少しずつ業績が戻ってきたと報告した。その上で、日々支えてくれる妻子に対し、感謝の言葉を贈った。
女性会員は、4年前の第1回集いで体験説法に立ち、経営者としての喜びを発表した後、立ち退き問題や従業員との金銭トラブル、コロナ禍と試練が続き、現在は経営に疑問が生じていると述懐。それでも、福永氏から学んだ「強烈な願望を心に抱け」といった教えの数々が苦境を乗り越える力になっていると話し、今後も信念をぶらさず、目の前の親子のために事業を続けていくと誓った。
座談会形式で行われた質疑応答では、LINE(ライン)のオープンチャット機能を使い、オンライン参加者からも質問が寄せられた。コロナ禍での事業継続に対する心構えを求める声に対し、回答者として登壇した同会共同推進副責任者(64)=杉並教会=は、ピンチをチャンスと捉え、経費削減など「足元を見直すことが重要」と具体的なアドバイスを伝えた。
この後、庭野会長が登壇した。庭野会長は、経営者として社会の荒波に立ち向かう会員に向け、仏教学者・中村元氏の著書『仏典のことば』の中から、さまざまな原始仏典に説かれた仏の智慧(ちえ)を紹介。「いろは歌」の原文といわれる「涅槃経」の一節「諸行無常 是生滅法(ぜしょうめっぽう) 生滅滅已(しょうめつめつい) 寂滅為楽(じゃくめついらく)」から、「この世のものは、うつりかわる」という「無常」に焦点を当て、時代の過渡期において、古いものにこだわったり、新しいものに惑わされたりしない「中道」の大切さを伝えた。
また、夫婦の在り方にも言及。夫と妻がそれぞれに務めるべき義務として五つの「道」を紹介した。さらに、「今日は皆さん方からもすごい言葉を教えて頂きました。それは『ど真剣』ということであります。私たちは信仰者としても、仏さまの教えを『ど真剣』になって学ばなければいけないと思わせて頂きました」と述べた。
最後に、『未来の分かち合い』と題し、同会共同推進責任者の大畑昌義さん(70)=荒川教会渉外部長=が閉会のあいさつを行った。