「第1回庭野平和賞奨励賞」受賞者決定 人々の生活に密着した平和活動に光を
公益財団法人庭野平和財団(庭野日鑛名誉会長、庭野浩士理事長)による「第1回庭野平和賞奨励賞」の受賞者がこのほど決定した。受賞したのは人権活動家のルキ・フェルナンド氏(49、スリランカ)、「アクション・ノースイースト・トラスト」(The Ant)共同代表のジェニファー・リアン氏(50、インド)、「グスドゥリアン・ネットワーク」ナショナルディレクターのアリサ・コトルンナダ・ムナワロ・ワヒド氏(50、インドネシア)の3人。9月16日、京都市のホテルで記者会見を開き、席上、庭野理事長が発表した。受賞者には、正賞の賞状と副賞の賞金200万円が贈られる。
同賞は昨年9月に新設され、宗教的精神を基盤とした平和活動と研究を通し、先駆的で萌芽(ほうが)的、実験的な活動に取り組む個人(団体)を表彰するもの。人々の生活に密着した地道な平和活動に光を当て、社会の関心を呼び起こし、後に続く人材の輩出につなげることも目的の一つとしている。受賞者は、国内外の学識者やジャーナリスト、NPO・NGO関係者などの推薦人が挙げた候補者の中から、「庭野平和賞奨励賞委員会」による審査、面談によって決定した。
フェルナンド氏は、シンハラ人でキリスト教徒(カトリック)。1983年から2009年まで自治を要求するタミル人反政府組織と政府が対立した「スリランカ内戦」のさなかに、反政府側と見なされ、抑圧されてきたタミル人の声に耳を傾け、寄り添ってきた。
さらに、シンハラ人とタミル人とアイデンティティーが異なるため、両民族から迫害されていたムスリム(イスラーム教徒)のもとに足を運び、救援と人権擁護に取り組んだほか、内戦による行方不明者の捜索活動への支援も実施。同賞委員会は、民族や宗教の違いを超えて相手の良心を信じ、民主主義の醸成のために行動し続ける活動を評価した。
インド北東部アッサム州で活動しているリアン氏は、同州西部のボド地域で、民族対立による武装闘争が繰り広げられる中、「The Ant」を設立。非暴力(アヒンサ)の信念を胸に、貧困撲滅を目的とした農村開発や住民の職能訓練、女性の人権擁護、暴力的環境下にある人々の心身のケア活動に努めてきた。
また、NGOや市民社会と協力し、住民主体の紛争解決のトレーニングを行う「開発行動研究所」(IDeA)を創設し、人々の平和醸成能力の獲得を促進。同州の平和に寄与する著名なネットワーク組織となっている。同氏のリーダーシップは、国外でも高く評価され、武装闘争のただ中に身を置き、諸問題の解決のすべを人々と協力して紡ぎ出す行動が受賞理由となった。
一方、ムスリムのワヒド氏は、インドネシア第4代大統領の故アブドゥルラフマン・ワヒドの長女として生まれた。父親の遺志を継承し、「多元的イスラーム」「寛容のイスラーム」を国内に浸透させるため、「グスドゥリアン・ネットワーク」を設立。イスラームの名をかたった過激派組織による偏見と抑圧にさらされている少数派の宗派の権利を擁護する活動を行っている。
また、地域の産業開発で土地を収奪されたり、生活環境が破壊されたりしている農民の支援にも奔走。国内最大のイスラーム団体「ナフダトゥル・ウラマー」の家族福利研究所事務局長も務めており、同国の平和構築に尽力する功績を認め、受賞となった。
贈呈は、9月下旬から10月上旬にかけて、庭野理事長が受賞者のもとに赴き、現地で行われる。また、11月以降には日本と現地をオンラインでつなぎ、日本の市民との交流会を予定している。