〈ひと〉本会一食平和基金とBCYFIの元奨学生 佼成学園女子校の英語教諭を務める  デル・ムンド・ジョーイーさん(28)

「教育は誰にも奪うことができない、貴重で大切なもの」と語るジョーイーさん

佼成学園女子中学高等学校の英語教諭として、今年で2年目を迎えた。

フィリピン・バターン州の出身。同国で貧困家庭の青少年に向けて、立正佼成会一食(いちじき)平和基金とバターンキリスト教青年財団(BCYFI)が合同で実施する奨学金プログラムを受け、大学を卒業した。

教師を志したのは小学校の恩師がきっかけだった。難しいと感じていた算数を理解できるまで、最後まで見守ってくれた恩師の優しさに憧れを抱いた。人に何かを伝えることが好きな性格もあり、教師への夢が膨らんだ。

しかし、常にひっ迫する家計を考えると大学進学を決断できず、進路では就職も視野に入れた。高校の卒業が近づいた頃、BCYFIの奨学金制度を知った。「家計は苦しいけど、大学に行ってほしい」。そう背中を押してくれたのは母だった。母は若い頃、教師になる夢を抱いていたが、貧困によって諦めざるを得ないという経験があった。

何百人もの応募の中から、合格できるのはたった20人。高い倍率の中、チャンスを無駄にしてはいけないと自分に言い聞かせ、試験に臨んだ。結果は見事合格。同奨学金制度を受けて大学生になった。得意の英語を生かして教師になりたいと、教育学部を専攻し、教員免許を取得した。

〈教育を受けることを支えてくれた日本で、恩返しがしたい〉と願い、就職先を日本に決めた。来日後は語学指導などを行う外国青年招致事業「JETプログラム」を5年間受け、日本に慣れる努力をした。同プログラム終了後、奨学金の拠出先である佼成会に対する感謝の気持ちから、佼成学園女子校への赴任を志望し、2021年に採用された。

現在、同校の中学生と高校生に英語を教えるとともに副担任も受け持つ。生徒と向き合う上で大切にしていることは「心を通わせること」。知識をただ教えるのではなく、相手に寄り添った指導ができるよう、教師を志すきっかけになった恩師の姿を手本に、生徒と会話する際は、相手の理解力に合わせて単語を選ぶ、聞き取りやすい発音を意識するなど自分なりの工夫を重ねる。廊下ですれ違った生徒から「ハロー、ジョーイー先生!」と気さくに声をかけてもらえるようになったのが、最近うれしかったことの一つだ。

「佼成会の皆さんの支援が、私の夢の実現に大きな力を与えてくださいました。その感謝を胸に、教師として、生徒一人ひとりに向き合った指導をしていきたいと思います」