〈ひと〉認定NPO法人FTCJで活動する佼成学園女子中学1年生 波田野優さん(12)

波田野さん

今年6月、子供に関する政策全般をつかさどる「こども基本法」および「こども家庭庁」設置法が成立した。波田野さんは、同庁設置にあたり国会議員と意見を交わした小・中学生の一人で、認定NPO法人フリー・ザ・チルドレン・ジャパン(FTCJ、東京・世田谷区)のメンバーだ。

FTCJは、「子どもには世界を変える力がある」という理念のもとに始まったカナダのフリー・ザ・チルドレンのパートナー団体として、1999年に設立。国内外の貧困や差別から子供を解放するための支援事業のほか、世界の社会課題解決に向けた啓発活動などに取り組む。

波田野さんは小学4年生の時、「自由研究」のテーマにアフリカの教育問題を取り上げた。その際、FTCJの取り組むキャンプの動画を偶然見つけた。子供や若者が社会問題について自由に話し合い、意見を交わすFTCJのメンバーの姿がとても活き活きと、楽しそうに見えた。「私もこの仲間と一緒に世界を変えるようなアクションを起こしたい」と、FTCJへの参加を決意。メンバーとして子供の権利を守るための諸活動に力を注ぐなど、積極的に問題提起に努めた。

小学5年生の「自由研究」では、開発途上国の児童労働について学習。「学校に行きたいのに行けない子がいる。私は朝、眠くて学校に行きたくないと思うことがあるけれど、学校に通える環境にいること自体が幸せ。世界では私より幼い子が労働を強いられている。現実を知って悲しくなりました」。

子供の問題に目を向けるようになったきっかけは、小学1年生の時に遭ったいじめだ。学校で配られた案内状を頼りにカウンセラーに話を聞いてもらうと、心が落ち着いた。自身の経験から、子供たちが苦しさを吐き出せる場があると知ることが必要で、そのためには社会の啓発が重要と思い至った。

波田野さんが小学生の時に作った「児童労働新聞」。当時、図書室に掲示して児童労働の実態を訴えた

波田野さんは、児童労働を表現した絵を描いたはがきを友人に送ったり、新聞を作って図書室に掲示したりするなどして、児童労働の実態を紹介したほか、自ら動画を製作して社会にアピールした。その動画が今年、「持続可能な開発目標」(SDGs)の動画による啓発を目的に開催された「第3回SDGsクリエイティブアワード」で審査員特別賞を受賞した。

佼成学園女子中学校に進学後も、FTCJが実行委員を務める「広げよう!子どもの権利条約キャンペーン」に参画し、政府への提言も行っている。「こども基本法」が成立して子供の権利が保障されるには、社会の理解が不可欠。将来、学校教育にこうしたカリキュラムを取り入れて、皆が考えるようになってほしいと、波田野さんは話す。

「学校で友達から、『自分も頑張らなくちゃいけないと思った』『子供として児童労働にどう向き合うか考えたい』と言われたとき、FTCJで活動してきて良かったなと感じます」

――12歳の“活動家”は、そう言ってはにかんだ。