WCRP日本委 「核兵器禁止条約第1回締約国会議に向けての声明」を政府に提出
世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会は6月2日、植松誠理事長(日本聖公会主教)名による「核兵器禁止条約第1回締約国会議に向けての声明」をウェブサイトで発表した。同16日には「ストップ!核依存タスクフォース」責任者の中村憲一郎理事(立正佼成会会参務)ら5人が外務省(東京・千代田区)を訪問。林芳正外務大臣に面会し、声明文を手渡した。
核兵器禁止条約は、全ての核兵器の使用、開発、実験、製造、取得、保有、貯蔵、移転などを認めず、核による威嚇も禁じる国際条約。2017年7月7日に国連本部で122カ国の賛成により採択され、20年10月24日に同条約の発効要件である50の国や地域の批准を達成して、翌21年1月22日に発効した。同日本委でも、条約の批准を目指してタスクフォースを設置し、シンポジウムを開くなど啓発活動やアドボカシー運動に取り組んできた。
締約国会議は、核兵器禁止条約の運用について検討するもので、条約の発効から1年以内の実施が定められている。新型コロナウイルスの世界的な流行による二度の延期を経て、今月21日から23日までオーストリアの首都ウィーンで行われる。同日本委は長年にわたり、核兵器廃絶を目指して啓発活動やアドボカシー運動に取り組んできた。
声明では冒頭、コロナ禍の影響による延期を経て会議が開かれることに対し、「核兵器廃絶への歴史的な前進」と歓迎の意を示した。
また、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に触れ、核兵器の使用を示唆するプーチン大統領の動向に呼応し、日本でも国会議員から「核共有(シェアリング)」の導入を推進すべきとの発言があり、日本の国是である「非核三原則」を否定する主張がなされていることに懸念を表明。核抑止政策は核兵器の使用を前提としたものであり、「疑心暗鬼を生み出す政策はかえって相互の憎悪を増長し、むしろ核使用の危険性を一層高める」と警鐘を鳴らす。
その上で、関係各国と日本政府に対し5項目を要請。このうち日本政府に向けては、条約の締約国になること、唯一の戦争被爆国として締約国会議に積極的に貢献すること、「非核三原則」を堅持し、核兵器に依存しない日本の平和と安全を構築する政策を検討することを求めている。
外務省での面会の席上、篠原祥哲事務局長が声明文の内容を林外務大臣に説明し、政府への要望を伝えた。これに対し、林外務大臣は、締約国会議に加え、今年8月には米・ニューヨークの国連本部で核不拡散条約(NPT)再検討会議が開かれることに触れ、核軍縮・廃絶の動きを「逆行させてはならないという思いを強くしている」と表明。核兵器禁止条約は、核なき世界への出口とも言える重要な条約との認識を示し、「地道な努力を重ねながら、しっかりと歩みを続けていきたい」と語った。
なお、国連経済社会理事会(ECOSOC)の特殊協議資格を有する同日本委は国連NGOの一員として、締約国会議に同タスクフォースメンバーの神谷昌道アジア宗教者平和会議(ACRP)シニアアドバイザーらを派遣。同会議にオブザーバーとして出席するほか、オーストリア政府主催の「核兵器の非人道性に関する国際会議」やNGOが主催するサイドイベントに参加する予定だ。