「タイ仏教使節団がバチカンを訪問」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)
インドネシアの仏教史跡 入場料値上げを見送り
インドネシア政府はこのほど、同国ジャワ島中部にある仏教史跡のボロブドゥール寺院群への入場料値上げを見送ると発表した。
同寺院群は、カンボジアのアンコールワット、ミャンマーのバガンと共に、「世界三大仏教史跡」の一つと称される。9世紀頃にジャワ島中央部で栄えたシャイレンドラ朝によって建立されたといわれ、当時の民間信仰であった先祖供養と、仏教の涅槃(ねはん)への道を象徴的に融和させた建築様式で建設された。中央の寺院は、六つの正方形と三つの円形のプラットフォームが大きなキューポラ(半円球形の屋根)で覆われている。内部は2672枚の彫刻版画で装飾されており、建立当時には504体の仏像が安置されていたといわれる。キューポラには72体の仏像が安置されている。同寺院群は、インドネシア有数の観光地としてだけでなく、仏教徒たちの礼拝、集会、巡礼の場としての役割も果たしている。
これまでの入場料は、インドネシア国民の子供2万5000ルピア(約230円)、大人5万ルピア(約450円)だったのに対し、75万ルピア(約6800円)に大幅値上げすると公表された。値上げが実現すれば、同国の低所得労働者の給料が約200万ルピア(約1万8000円)であることと比較すると、高額な入場料となる。この政府案に対して、同国の仏教徒のみならず、イスラームやキリスト教の共同体も反対を表明していた。
一方、寺院群への人数制限については、「世界最大の仏教寺院群の環境保全」を名目に、一日の訪問客をガイド付きで1200人に限定する試みを踏襲すると発表した。これに対し、インドネシア仏教協会(WALUBI)のルスリン・タン広報部長は、ボロブドゥール寺院群を訪問する観光客や巡礼者の減少を懸念する仏教徒や現地の人々の声を伝えると同時に、「あらゆる宗教の礼拝の場は、全ての人々のために開放されるべき」との原則を主張。仏僧のスリ・パンニャヴァロ・マハテラ師は、「多くの貧しい人々が寺院群に来られなくなり、大きな損失となる」と憂慮を表した。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)