世界の正教会がウクライナ戦争を非難(海外通信・バチカン支局)
世界教会協議会(WCC)の第11回総会が、今年の8月末から9月上旬にかけて、ドイツのカールスルーエで『キリストの愛が世界を和解と一致へと動かす』をテーマに開催される。世界の120カ国に散在する352のキリスト教諸教会(総信徒数5億8000万人 )から、4000人を超える代表者たちが参加する予定だ。
総会に向けた提言をまとめるために、ブルガリアとジョージアの正教会を除く、世界の諸正教会の指導者たちがこのほど、東地中海のキプロス島に参集し、「WCC総会へ向けての準備会議」を開催した。
世界の諸正教会に属する信徒総数は約2億2000万人で、19カ国に100万人を超える正教徒がいる。世界でカトリック教会に次いで2番目に信徒数の多いキリスト教教会だ。ロシア正教会も、モスクワ総主教区外務部長のヒラリオン大主教を団長とする6人のメンバーで構成される使節団を派遣した。現地のキプロス島正教会に次いで2番目に大きい使節団だった。
この準備会議で採択された31項目にわたる提言文は、その第24項で「会議においては、すでに多くの人の命が奪われているウクライナでの武力紛争に関する重大なる憂慮が表明された」と指摘しながら、「会議の参加者たちは、(世界で進行中の)種々の戦争を非難し、全ての紛争当事者たちに、緊急に平和を回復させ、ウクライナ、ロシア、欧州、全世界に安全を保障するようにとの声明文を、満場一致で採択した」と記している。
さらに、同項では「私たちは、憎悪と分裂をもたらす組織的な虚偽ニュース(フェイクニュース)を促進するキャンペーンをも非難する」と述べられている。ウクライナ戦争が、種々のフェイクニュースによって正当化されているからだ。
ギリシャの「オーソドックス・タイムズ」紙は5月17日、「戦争が満場一致で非難されたことが無視されてはならず」「その意味するところは、ロシア正教会モスクワ総主教区外務部長のヒラリオン大主教を前に、(世界の正教会によって)ロシア正教会が非難されたことになる」とコメントした。
プーチン大統領のウクライナ侵攻に宗教的動機を与えて“祝福”する、キリル総主教に対する糾弾でもある。同紙は、ウクライナ戦争を、「正教の一国が他の正教徒の国を攻撃する行為」としても非難している。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)