WCRP日本委共催 「気候正義のための宗教間会議」で東京大学の江守教授が講演
諸宗教協力による気候危機への取り組みを推進する米国の環境団体グリーンフェイス主催の「気候正義のための宗教間会議」が4月21日、オンラインで開催された。環境NGO気候ネットワーク、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会などが共催し、116人が視聴した。
同会議は、気候危機の現状を学び、環境問題の解決に向けた宗教者の役割と具体的行動について考えるもの。当日は、WCRP/RfP日本委の田中庸仁理事(真生会会長)と三宅善信理事(金光教春日丘教会教会長)による「開会の祈り」に続き、東京大学未来ビジョン研究センター教授で国立環境研究所上級主席研究員の江守正多氏が、『気候の危機 科学的な最新情報』と題して講演した。
この中で江守氏は、昨年8月に発表された「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の報告書を基に、1850年から今日までの世界の平均気温の推移を示す観測データや、現代の人間活動に伴う二酸化炭素(CO2)の排出量を五つのパターンに分け、それらの影響で起きる2100年までの気候変動を予測したシミュレーションを紹介した。温室効果ガスの削減に向けて現在各国が取り組む政策では、今世紀末には平均気温が約3度、海面が約2メートル上昇するとの見通しを示し、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べて1.5度に抑えることを目標とするパリ協定の達成に向け、「ギリギリのところまで来ている」と警鐘を鳴らした。
さらに、気候変動がもたらす負担や利益を公平に共有し、弱者の権利を保護する「気候正義」という人権的視点に言及。CO2排出量の多くを先進国が占めているにもかかわらず、温暖化による異常気象や海面上昇などで深刻な被害を受けるのは、CO2排出量の少ない開発途上国や、将来を担う世代であり、これは人権侵害にあたると指摘した。持続可能な社会に向け、世界の諸問題への取り組みと複合的に考えながら、今まで以上に化石燃料による発電を減らし、再生可能エネルギーを増やしていくことが大切と語った。
この後、地球環境戦略研究機関の飯田真弓氏、NPO法人気候ネットワーク東京事務所長の桃井貴子氏、一般社団法人日本若者協議会代表理事の室橋祐貴氏が日本のエネルギー政策や各団体の取り組みを発表したほか、インドネシア・西ジャワ州で石炭火力発電所の建設に反対するNGOインドネシア環境フォーラム(WALHI)と住民ネットワークJATAYUの代表者が、現地の状況を報告した。