歴史の針を巻き戻すプーチン大統領(海外通信・バチカン支局)

ロシアのプーチン大統領は2月24日、実効支配する親ロシア派勢力とウクライナ軍の抗争が続くウクライナ東部ドンバス地域での「特別軍事作戦」を宣言し、同国軍はウクライナへの侵攻を開始した。同大統領は、侵攻の目的をウクライナの「非武装化と非ナチス化」とし、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)への加盟を目指すゼレンスキー政権をナチスになぞらえている。

ロシア軍は26日、首都キエフに迫り、ウクライナ全土の制圧を目的としていると欧米諸国は判断している。それを裏付けるように、プーチン政権の外交政策顧問を務めるドミトリー・スースロフ氏は、イタリア日刊紙「コリエレ・デラ・セラ」(同25日付)に掲載されたインタビュー記事の中で、ロシア軍によるウクライナ侵攻の目的を「ゼレンスキー政権の交代にある」と明言している。また、「ロシア軍はウクライナ全土の制圧を目指している」「プーチン大統領は、二つのスラブ人国家を統一する使命を負っている」と説明。ロシア側によるウクライナ政府との対話の拒否は「軍事作戦の継続」を意味しており、「新しい(親ロシア)政府の誕生まで続けられる」と言う。加えて、「私たちは、30年間にわたって存在してきたウクライナの最後の瞬間を見ている」と述べ、現政権の転覆後に「愛国主義をイデオロギーとせず、欧米諸国と全く違った関係(反NATO)を有する、ロシアが友好的で誠実と判断する新国家が誕生する」と期待を寄せる内容だ。

さらに、スースロフ氏は、プーチン大統領の歴史的遺産はロシアの影響下にあるスラブ系姉妹諸国家との同盟締結であり、そうした使命を遂行する同大統領は、「ウクライナ軍がロシア軍との戦いを拒否し、消滅することを希望している」とも明かしている。米軍がアフガニスタンから撤退した直後、極めて保守的なイスラーム主義を掲げる勢力「タリバン」と戦うことなく消滅したアフガニスタン軍のようにだ。そのため、ウクライナでは、1979年にソ連軍がアフガニスタンに侵攻した時のように、紛争が長期化し、撤退を余儀なくされたような状況は起こらないと明言している。