厳しさ増すミャンマーの窮状――国軍のクーデターから1年(海外通信・バチカン支局)

ボー枢機卿は、国民に対しても、「あなたたちの痛み、苦しみ、空腹を分かち合い、あなたたちの失望、抵抗運動を理解している」とメッセージ。一方、暴力による抵抗の必要性を信じる人々に対して「他の手段がある」と述べ、平和的な手段を取るようにと訴えた。

ボー枢機卿は、国軍の抑圧による国民の苦しみは、「長引く十字架の受難、エデンの楽園が十字架の道となった」とも語ったが、「バチカンニュース」はこの表現を裏付ける、貧困状況などを調査した国連機関や民間団体による最新の統計を掲載。これまで、治安部隊の弾圧による死者は1500人以上、逮捕者は1万1800人を超えた。15の州と地域のうち14の州・地域で急性栄養失調に苦しむ人が増加し、2500万人(総人口の半数)が貧困に陥っていると報じた。子供を含めた約1440万人が人道支援を必要としており、国内避難民はクーデター前に比べて32万1000人増加し、特に、キリスト教徒の多い地域で急増していると伝えた。

また、クーデターによる同国の混乱は、長年にわたる国軍と少数民族との対立を再燃させ、各地で武力衝突が起きている。国軍と交戦するカチン、チン、カレン、カヤーの各民族には、キリスト教徒が多い。少数民族が多く住むチン、カヤー、カレン州では、多数のキリスト教徒が紛争を逃れて教会に避難している。しかし、国軍は教会を砲撃するだけでなく、神父や牧師たちを逮捕し、キリスト教徒など民間人の犠牲が報告されている。

ボー枢機卿は、国軍による礼拝所への攻撃と避難者の殺害を厳しく非難。対話の実現を訴え、「拘束されている政治指導者や市民の釈放、表現の自由を含めた全ての国民の基本的人権の尊重」を求めている。

ボー枢機卿が「無秩序、混沌(こんとん)、紛争により、人々の苦痛が驚くほどの速さで増している」と窮状を訴えるミャンマーの現状。国連の専門家たちは、同国が本格的な内戦に陥り、劇的に状況が悪化する危険性があると懸念を表明している。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)