カナダ先住民と教皇の懇談が決まる(海外通信・バチカン支局)
カナダの先住民「ファースト・ネーション」「メティ」「イヌイット」の使節団が今年3月末から4月1日までバチカンを訪問することが決まった。各民族がローマ教皇フランシスコと個別に懇談し、4月1日に全員で謁見(えっけん)する予定だ。カナダのカトリック司教会議と先住民の代表団が2月1日に公表した。
バチカン訪問の目的は、かつての先住民への差別問題を巡って、先住民とカトリック間の融和・和解を促進することにある。カナダでは19世紀から1990年代まで、先住民に対して西洋文化・文明への同化政策が進められた。先住民の子供たちを強制的に家族から切り離し、寄宿学校に収容。先住民たちは自らの言語、文化から引き離され、独自のアイデンティティーを喪失させられた。その同化政策は、いわば植民地主義的なものだった。
政府の命令で開校した約130の寄宿学校のうち、4分の3がカトリック教会に委託された。政府は2008年に謝罪を表明していたが、昨年、各地の寄宿学校跡から墓標、記録のない先住民の子供たちの集団埋葬地が次々と発見され、国内で大きな問題になった。寄宿学校では聖職者や教師による先住民の子供たちへの虐待が横行し、15万人を超える子供たちが被害を受けたとされる。カナダ政府、同国カトリック教会や他のキリスト教諸教会は、先住民に対する謝罪を表明した。しかし、先住民たちは和解への第一歩として、教皇による“謝罪”を要求。こうした状況から、昨年12月にバチカンでカナダ先住民使節団と教皇との懇談が予定されたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い延期されていた。
カナダ政府は1月4日、先住民の代表団と合意した総額400億カナダドル(約3兆6000億円)に及ぶ和解協定の内容を発表。親元から強制的に引き離され、寄宿学校で同化政策の被害を受けた人々に補償金200億カナダドルを支払う。また、先住民の子供に必要なサービスを提供してこなかったことを認め、児童福祉制度の改革に向けて200億カナダドルを拠出する。
カナダのカトリック教会も、「先住民と共に希望への道程を歩んでいくための具体的な支援として、5年間で3000万カナダドル(約27億円)を拠出する」と公表した。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)