教皇の説くジャーナリズム――世界を説明し、世界の暗部に光を当てる(海外通信・バチカン支局)
ローマ教皇フランシスコは11月13日、バチカンで自身を含む歴代教皇(教皇ヨハネ・パウロ二世、名誉教皇ベネディクト十六世)の国際旅行に随行してきた2人の記者に勲章を授与し、席上、参列するバチカン記者室の各国の記者たちに対してジャーナリズムについての自らの見解を述べた。
教皇は、ジャーナリズムは他の職業と違い、「世界において悪を治癒する使命(ミッション)がある」と、社会にとって医師のような役割があると定義。記者たちに向かい、「あなたたちの使命は、世界(の現状やあり様)を説明するだけでなく、(光を当てて)世界の暗部を少なくし、人々の恐れを軽減して、より強い関心と信頼を持って他者を見つめられるようにすることだ」と述べた。
一方、「追っている一つのニュースに関して、取材したことをまとめ、状況を判断し、前例について学ぶために立ち止まり、考察し、黙考して(真相について)近づいていくことは、複雑な作業である」としながらも、ニュースに意味を与えられずに、ニュースそのものに押し潰(つぶ)されてしまうのは「危険」と指摘。これに対し、「良きジャーナリズムを性格づける三つの動詞」とは、「聞く」「深める」「語る」であると明示。「聞く」こととは、「歴史の主人公や情報源と対面し、インタビューするための忍耐を持つこと」であり、聞くことと見ることは「同時進行すること」であり、記者にとって「私はそこにいた」という体験が重要と述べた。その場にいるからこそ、出来事のニュアンスや臨場感をつかみ、状況を描写できると伝えた。
また、SNSを含むインターネットの“独裁”という罠(わな)に陥らないようにと警鐘を鳴らし、「見聞を大事にする良きジャーナリズムには、時間が必要である」とし、「バチカン記者室から出て街中を歩き、人と出会い、状況を確認するために、“靴底をすり減らす”新聞記者を必要としている」との考えを示した。