「22億人のキリスト教徒が祈る『創造の保全』」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)

風雲急を告げるミャンマー情勢

今年2月にクーデターによりミャンマーの政権を掌握した国軍は、このほど、同国チン州でキリスト教と仏教の指導者たちを招集し、同州内の教会と僧院の活動費として、約11米ドル相当をチャット(ミャンマーの通貨)で支給しようとした。しかし、両宗教のほとんどの指導者が受領を拒否した。ローマ教皇庁外国宣教事業部の国際通信社「フィデス」が9月7日に報じた。

両宗教の指導者たちは、支援金を拒否した理由として、「私たちは、買収されたと思われることや、国軍の協力者や支持者であると受け取られることはしたくない」と説明。国軍から家族や共同体への報復を避けるため招集には応じたが、支援金を丁寧に返却したとのことだ。

さらに、国軍は支援金の配付に先立ち、支給先のリストを作成しようと試みたが、両宗教の指導者たちは、自らの名前を明かすことを拒否したという。フィデスは、「支援金を出すよりも、(国軍によって)攻撃、破壊、押収、荒廃させられた宗教施設を再建すべきだ」との多くの諸宗教指導者たちの声も伝えている。

ミャンマーの民主派勢力が国軍に対抗する並行政府として樹立した「国民統一政府」(NUG)は同日、「国軍から国民を守るための戦い」を宣言。「この国民革命の期間を通して、全てのミャンマー市民が全土で、ミンアウンフライン総司令官に率いられる軍政に対して蜂起するように」と国民に呼びかけた。

同政府のドゥワラシラー副大統領は、「国軍による残虐な殺人、拷問、逮捕が行われ始めてから数カ月が経った。国軍兵士たちは、民家、宗教施設、病院、学校に介入すると、非人間的な行為を始め、それを継続していくと皆が知っている」と発言している。

フィデスは、アウンサンスーチー氏を指導者とする同政府が、独自の民兵組織「人民防衛隊」を設立し、国軍に対抗していくために、国軍兵士に投降を呼びかけ、警察官に対しても同隊に参加するよう訴えていると伝えた。また、NUGは、国内に多く存在し、国軍と武力闘争を展開する少数民族の民兵組織にも支援を要請。民族や地域によっては、特定の宗教の信徒が多く、宗教が各民族や地区のアイデンティティーの一部となっている。風雲急を告げるミャンマーの情勢は、内戦へと向かうのだろうか。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)