カナダ先住民同化政策 負の歴史と向き合うカトリック教会(海外通信・バチカン支局)

こうした「カナダにおける悲劇の歴史」が明らかになる中で、トロント大司教区の声明文は出された。声明文では、カナダ政府と信仰共同体(キリスト教諸教会)によって進められた同化政策は、「先住民の子供たちを、彼らの言語、文化、アイデンティティーから切り離すという、恐るべき苦痛の源泉となる体制であった」と表明。その上で、「カトリック教会が、このような暗黒の歴史に加わったことに対し、償いをしなければならない。寄宿学校の教師たち(神父、修道者、信徒)が、虐待や注意不足による事故、職権の濫用(らんよう)によって、子供たちの尊厳性を侵害したことは否めない」と伝えられている。

また、同国カトリック司教会議常任評議会は7月16日、「癒やしと和解」「寄宿学校跡での墓地の建設」「先住民に対する教育、文化的支援」を3本柱とする「癒やしと和解促進のためのアピール」を公表した。同教会のカルガリー教区は18日、アルバータ州で開校されていた25の寄宿学校のうち、カトリック教会に委託されていた16校の卒業生たちに対し経済的補償を約束した。

教皇が今年12月にカナダの先住民と懇談

一方、先住民と政府によって設けられた「真理と和解委員会」は、「ローマ教皇の公式謝罪」を要請している。これを受け、同司教会議は、今年12月に先住民族「ファースト・ネーション」「メティ」「イヌイット」の代表者がバチカンを訪問すると発表。各民族が個別にローマ教皇フランシスコと懇談した後、全員で謁見(えっけん)する予定と明かした。3民族の長老、寄宿学校の卒業生、青年らで構成される使節団は、数人のカトリック司教、民族の指導者に付き添われるとのことだ。

同司教会議が発表した声明文には、教皇の謝罪に関して触れられていない。ただし、教皇は2015年にボリビアを訪問した時、南米大陸で植民地政策による侵略と征服が行われていた時代に、カトリック教会が犯した先住民への犯罪に関して、彼らを前にして謝罪している。カナダの先住民にも同様の意思を明かすのではないかとみられている。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)