「多文化共生公営墓地」の創設を 別府ムスリム協会が厚労省に陳情 WCRP日本委が賛同

別府ムスリム協会のカーン代表と諸宗教の賛同者が、厚労省に陳情書を提出

大分・別府市の「別府ムスリム協会」代表のカーン・ムハマド・タヒル・アバス代表(立命館アジア太平洋大学教授)が6月17日、厚生労働省を訪れ、田村憲久大臣に宛て「埋葬の自由を認め合える社会」の実現と「多文化共生公営墓地」の創設に関する陳情書を提出した。日本ムスリム協会の徳増公明会長、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会の篠原祥哲事務局長が同行。白眞勲参議院議員(立憲民主党)が同席した。

イスラームでは埋葬法を土葬と定めている。しかし、国内にムスリムの墓地は、東京の多磨霊園と神戸市外国人墓地を含め7カ所と少ない。別府ムスリム協会は10年以上前から土地を探し、2018年、大分・日出町に土葬の墓地を持つトラピスト修道院(カトリック)の紹介で同町の山中に土地を購入した。建設計画は法令に沿って行われたが、ため池の水質汚染や農業の風評被害を理由に一部住民から建設反対の声が上がり、建設許可は下りていない。別府ムスリム協会と町の協議が長く続いている。

今回の厚労省への陳情書提出は事態の進展を図るためのもの。陳情書では、日本政府が現在、外国人の受け入れを促す政策を実施していることを踏まえ、多文化共生社会の実現に向け、各都道府県に「多文化共生公営墓地」の建設を要望した。国の責任により、信仰に基づく埋葬を実施できる公営墓地を全国につくるか、既存の公営墓地の一区画を土葬区画として整備することを求めた。

この後の記者会見にはカーン氏、徳増氏、篠原氏のほか、賛同者である同修道院の塩谷久院長、曹洞宗善隆寺の自覚大道住職、同大学の児島真爾准教授が出席した。

参議院議員会館で行われた記者会見

カーン氏は「イスラームの問題だけではない。いろいろな国から来た人たちは文化が違い、多文化のお墓ができれば皆がストレスなく人生を生きられる」と話した。

徳増氏は、約5万人の日本人を含め国内には約23万人のムスリムが暮らしているとし、墓地の必要性が高まっていると説明。この問題に関心が集まり、共生を考える一つのきっかけになることを願っていると語った。