非暴力による解決を――アジアとミャンマーの枢機卿が呼びかけ(海外通信・バチカン支局)

アジア全域のカトリック教会を代表する12人の枢機卿はこのほど、ミャンマーで2月1日にクーデターを起こした国軍のほか、同国の政治指導者、抗議デモの参加者、全ての諸宗教指導者、カトリック教会に対して、「平和」の重要性を訴える合同の声明文を公表した。

この中で枢機卿たちは、「あまりにも激しい怒りや暴力によって、多くの血が流れた。そして、平和を愛し、自由のうちに発展していくために、一致と調和を求める国民が苦を強要されている」と憂慮の念を表明。国連安全保障理事会が満場一致で採択した「激化する暴力の停止」、ローマ教皇フランシスコによる「平和、調和、正義へ向けてのアピール」、東南アジア諸国連合(ASEAN)の「対話、和解、秩序の回復」など、同国に向けたさまざまな声明を紹介した。解決に向けて「対話」を始めるよう要請している。

さらに、武装した警官たちの前でひざまずき、武装解除を訴えたカトリックの修道女の様子が世界で報じられたことを挙げ、「ミャンマー国民は、平和を愛し、発展の機会を探し求めているだけなのだ」と伝えた。「私たち(アジア人)は一つの家族であり、皆があなたたち(ミャンマー国民)を支援したいと願っている。あなたたちも、家の中(国内)で、平和は可能だと示し始めていかなければならない」と訴えている。

また、国軍のクーデターと市民への弾圧を非難し、平和を唱えてきたチャールズ・ボー枢機卿(カトリック・ヤンゴン大司教)に対し、「あなたと共にある」と連帯を表明。同枢機卿の苦痛と苦悩を分かち、「神への祈りのうちに、託された民を導くあなたのそばに立つ」と明かし、全ての関係者が紛争の迅速な解決に向けた道を見いだしていけるようにと願った。

ボー枢機卿も3月23日、治安部隊による激しい弾圧に対して、「暴力を使った抑圧には、非暴力で応えていくように」と、抗議デモに参加する若者たちへ呼びかけた。さらに、「苦痛、怒り、憤懣(ふんまん)、苦悩を生む大きな困難の中で生き延び、野蛮な暴力に抗(あらが)うミャンマーの若者たち」に理解を示し、抗議活動は「平和的な手段のみで」と訴え、「さらなる流血と犠牲者を出さないために、非暴力の原則を確固とした規律としていくように」と唱えていた。なぜなら、「全ての宗教伝統が、暴力は本質的に悪であると定め、非暴力を説いている」からだ。

さらに同枢機卿は、非武装の市民に対する治安部隊の暴力を激しく非難。一方、それに対抗して「暴力を選択すれば、国際社会の共感と支持を失うことになり、抗議デモが逆効果をもたらすことになる」と参加者に警告していた。

その上で、「暴力が(問題の)解決につながることはない。さらなる痛みと苦をもたらし、破壊を生むだけだ」と指摘。ミャンマー国内の全ての諸宗教指導者たちに向け、「私たちと一緒に平和を祈り、アピールし、実現するための努力を達成していこう」と声明文を結んでいる。

だが、抗議デモに対する治安部隊の弾圧、暴力は激化し続けている。3月25日には、34人の一般市民が殺害され、クーデター発生後の累計死者数が320人に達した。デモ参加者約3000人が逮捕されており、ヤンゴンにある国民民主連盟(NLD)の本部には同日、火炎瓶が投げ込まれた。

首都ネピドーでは27日、「国軍記念日」の式典が開催された。この中で演説したミン・アウン・フライン総司令官は、「昨年の総選挙で不正があり、クーデターは『避けられなかった』」(「共同通信」電子版同日付)と改めて国軍の行動を正当化した。その前夜、国軍は同記念日に抗議活動をした場合、「頭部に銃撃を受ける危険がある」(同)と警告していた。治安部隊による市民への攻撃は激しさを増すばかりで、当日には114人を超える抗議デモの参加者が殺害された。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)