コロナ禍での宗教の役割とは 国際宗教研究所がオンラインでシンポジウム

シンポジウムでは、コロナ禍の社会で孤立化する人に寄り添うために宗教が果たす役割などについて議論が交わされた(「Zoom」の画面)

『新たな感染症の時代における宗教』をテーマに、公益財団法人国際宗教研究所による公開シンポジウムが2月20日、オンラインで行われた。約200人が参加した。

当日は、宗教者や研究者、報道関係者など4人が発題者を務めた。

大正大学の高瀬顕功講師(浄土宗法源寺副住職)は、新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの寺院が葬儀や法事を一時中止したが、その後、檀家(だんか)の要望を受け、感染対策を取りながら再開したと説明。寺院での宗教儀礼が死者を悼む人々の心の癒やしとして求められていると述べた。

東京大学大学院の西村明准教授は、コレラ菌による感染症が大流行した明治初期、宗教者が政府の要請で庶民の衛生意識の啓発に協力したことを紹介。こうした経験や教訓を現代社会にどう生かすかが課題と語った。

世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会の篠原祥哲事務局長は、社会で孤立する人々に寄り添い、生きる希望と安心をもたらすのが宗教の役割と強調。コロナ禍で人が集えない中でも、“顔の見える信頼関係”を構築することが大切と述べた。その一例として、デジタル技術を活用し、昨年全12回にわたってオンラインでの祈りの集いを行い、人とのつながりを深めたことを報告した。

共同通信社の西出勇志編集委員兼論説委員は、コロナ禍で生活に困窮する人々の声に耳を傾け、代弁する姿勢が宗教者には求められていると指摘。宗教者は社会生活に欠かせないエッセンシャルワーカーでもあるとの考えも示し、その行動に期待を寄せた。この後、全体討議が行われた。