「パグウォッシュ公開講座」第4回 核廃絶への意識 全ての人に

中村氏(右上)は、「核兵器禁止条約」やNPTを手がかりに核廃絶の現状や課題について講演した(「Zoom」の画面) 

『核時代における非戦』をテーマに、科学者や市民らが平和への取り組みを考える今年度の「パグウォッシュ公開講座」(全4回)の第4回が2月12日、オンラインで実施された。日本パグウォッシュ会議、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会、明治学院大学国際平和研究所の共催。宗教者や市民90人が視聴した。同日本委から核兵器禁止条約批准タスクフォース責任者の中村憲一郎立正佼成会参務(京都教会長)、同メンバーの神谷昌道氏らが参加した。

当日は、『核兵器禁止条約発効後のNPTと新しい世界』と題し、長崎大学核兵器廃絶研究センターの中村桂子准教授が講演した。中村氏は、開発や実験、保有など核兵器を全面的に禁じる「核兵器禁止条約」が発効されるまでの経緯を説明。対人地雷やクラスター爆弾の禁止条約と同様に、志を同じくする国家と、市民やNGOなどが連携し、「人道的アプローチ」によって国際世論を動かし、条約が成立した点を高く評価した。

また、核軍縮・廃絶の取り組みを進めるために、同条約の前文にある、「女性と男性双方の参加は持続性ある平和と安全の促進・達成の重要な要素」との言葉に触れ、全ての人が平和について当事者意識を持つ重要性を強調した。さらに、条約の発効により法的拘束力を持った「核兵器は違法」という国際規範を周知することが、政治的にも人道的にも核兵器の使用を困難なものにし、金融機関が核兵器関連企業への投融資を見直すなどの効果があると述べた。

その上で、今年12月に、オーストリア・ウィーンで開催予定の締約国会議へのオブザーバー参加を日本政府に働きかけることを提言。核軍縮・廃絶に向けて公然と反対する国はないものの、核抑止力の必要性を唱える核保有国と、早急な廃絶を訴える非保有国の考えには大きな隔たりがあることから、唯一の戦争被爆国である日本がその橋渡し役を務めるべきと期待を寄せた。

続いて、中国新聞社の金崎由美編集局ヒロシマ平和メディアセンター長がコメント。同条約の発効は、核廃絶への重要な一里塚であり、次代を担う青年にも核廃絶の理念を継承してほしいと訴えた。