対話と共通善の追求を通して国家の一致を――米国カトリック教会(海外通信・バチカン支局)
あらゆる信仰を疎外、狂信化させる政治スピーチに反対――WCRP/RfP国際委員会
フランス・パリ郊外で10月16日、表現の自由に関する授業中にイスラームの預言者ムハンマドの風刺画を教材に使った中学校教師が、イスラーム過激派の男によって殺害される事件が発生した。同29日には、フランス南部ニース中心部にあるノートルダム大聖堂内で、刃物を持った同過激派による襲撃が発生し、カトリック信徒3人が死亡した。同国では、9月に風刺週刊紙「シャルリー・エブド」がムハンマドの風刺画を再掲載して以来、過激派によるテロ攻撃が懸念されていた。
オーストリア・ウィーン中心部にあるシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)の付近でも11月2日、発砲事件が発生して4人が死亡した。事件の容疑者は、「イスラーム国」(IS)を名乗る過激派組織の信奉者だった。アフガニスタンでも同日、カブール大学で武装した3人の男による襲撃事件が起き、犯人や学生ら計22人が死亡。ISが犯行声明を出した。
世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)国際委員会は11月4日、世界の各地で続発する宗教の名を使ったテロ攻撃に対し、声明文を公表。分裂をもたらすのではなく、尊重と結束を育むために言葉を使うように訴え、「言語(表現)の自由は教育を必要とする」と明示した。バチカンの公式ウェブサイト「バチカンニュース」が同8日に報じた。
この声明文では、「言語の自由は、同時に全ての人間の尊厳性を分かち合う価値観を必要とする」とし、風刺という表現の自由を認めながらも、それが人間の尊厳性を損なってはならないと強調。「宗教指導者として私たちは、(表現の自由とその限界に関して)報復的ではなく、尊厳性を保ちながら、人間的で慈悲に満ちた解決策を見いだしていかなければならない」と呼び掛けている。
また、報復は人類に破壊だけをもたらすとし、「全ての人が、あらゆる信仰の信徒たちを疎外し、狂信化させるような政治的発言に対して拒否する責任を負っている」と主張。その理由として、「私たちは、愛によって橋を懸けていく努力を続けなければならない」と唱えている。
さらに、預言者を公然と侮辱されたと受けとめるムスリム(イスラーム教徒)たちの苦しみに連帯を表明。「イスラームだけでなく、あらゆる宗教の原則を蹂躙(じゅうりん)する行為を行ってはならない」と戒めるとともに、過激派によるテロ攻撃を非難している。テロ攻撃の犠牲者たちに「深い連帯と祈り」を約束し、「傷を癒やし、正義に基づく平和を促進するために、諸宗教対話と相互尊重の精神に沿って発言し、行動していく」と誓っている。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)