「核兵器のない世界に向けての宗教者の発信」 WCRP/RfP日本委が公開オンラインシンポジウム
世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会による公開オンラインシンポジウム「核兵器のない世界に向けての宗教者の発信~被ばく75年、国連創設75年、WCRP創設50年によせて~」が10月11日、ウェブ会議システムを使って開催された。
同シンポジウムは、今年が原爆投下や国連創設、WCRP創設から節目の年にあたり、改めて核兵器廃絶における宗教者の役割を確認するとともに、メッセージを発信して廃絶に向けた行動を促進していくことが目的。加盟教団の信徒や市民約90人が視聴した。
開会に際し、妙法慈石会登陵山清川寺の石川清章代表役員があいさつ。明治学院大学の高原孝生教授、金光教春日丘教会の三宅善信教会長が基調講演を行った。
高原氏は、人類は普遍的な規範に基づいてこそ共存できるとし、それが平和と安全への「努力の結集」をうたった国連憲章であると説明。国連憲章は、単なる理想ではなく、一国では対処できない難題が出現することを見据えてつくられており、核廃絶への責任は、非核国を含めた全ての国にあると訴えた。
一方、三宅師は、国連の歩みと世界の動向を照らし合わせながら、WCRP/RfPが創設当初から軍縮、とりわけ核軍縮の活動に力を入れてきたことは、世界の流れを踏まえた国連の取り組みに合致すると報告。さらに、核抑止論を安全保障政策に据える国があるが、核兵器は存在する限り、使われる危険があると指摘。原爆投下から75年を経た現在、先達が築いてきた平和への歩みを今後も継承していく必要性を強調した。
この後、パネルトークが行われ、カトリックの前田万葉枢機卿、日本ムスリム協会の徳増公明会長、黒住教婦人会の黒住昭子会長、WCRP/RfP日本委の篠原祥哲事務局長がパネリストとして出演。アジア宗教者平和会議(ACRP)の神谷昌道シニアアドバイザーがコーディネーターを務めた。
この中で、前田師は、ローマ教皇ヨハネ・パウロ二世、同フランシスコが広島、長崎の両被爆地を訪問した意義を解説。二人のメッセージに共通するものは、「核兵器は絶対的な悪である。人類のみならず地球上の全てのいのちと核兵器は共存できない」と訴えた。徳増師は、核兵器禁止条約の批准国数が発効に必要な50に近づいている現状を踏まえ、条約が発効され国際法となることへの期待と消極的な立場をとる日本政府への要望を語った。黒住師は、学生時代を広島で過ごし、核兵器の非人道性を強く意識してきた体験を述懐。唯一の戦争被爆国である日本人がその重みを受けとめて、今後も核廃絶のメッセージを発信していくと述べた。篠原事務局長は、WCRP/RfPが諸宗教協力とともに、政治や経済、市民運動など各分野の人々と連携して活動を進めてきた特徴を説明。核兵器廃絶を求める「ヒバクシャ国際署名」、「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)、「核軍縮・不拡散議員連盟」(PNND)、広島市長が会長を務める「平和首長会議」などとの取り組みを詳述した。
質疑応答では、円応教海外布教センターの深田章子所長が共同コーディネーターとして加わった。核廃絶への関心を高める方法や運動を広げていくための宗教者の役割などに関する質問が出され、意見が交わされた。最後に立正佼成会の中村憲一郎参務があいさつし、この日の議論を総括した。