英国での新型コロナワクチンの共同開発に大きな期待を寄せる欧州(海外通信・バチカン支局)
新型コロナウイルスに対するワクチンの開発が世界各地で進められている。
ローマ教皇フランシスコは5月3日、バチカンでの正午の祈りの席上、「重大な医療危機に対し、適切で効果的な方法で応えるためにさまざまな形で展開される国際協力を支持し、奨励する」と発言した。さらに、「(新型コロナウイルスに対する)ワクチンと治療法を開発するために、透明性のある開かれた非営利目的の科学協力の重要性」を強調し、全ての人々が治療を受けられることが重要と訴えた。
英国では製薬会社アストラゼネカとオックスフォード大学がワクチンを共同で開発している。6月13日には、この共同開発のワクチンを欧州に供給することでイタリア、ドイツ、フランス、オランダと合意したことがアストラゼネカや各国政府から発表された。この開発プロジェクトには、ローマ南部のポメジアにあるアドヴェント・イルブム社も参加している。
アストラゼネカは、英国、米国、インドとも合意を成立させており、今年から来年にかけて約20億回分の生産可能になるとの見通しを発表している。このうち、最大で約4億回分が欧州に供給される予定だ。
共同開発プロジェクトではこれまで、サルによる試験で有効性を確認し、これを受けて4月末に第1期臨床試験に入った。約1000人のボランティアを対象に安全性や有効性を確認。第2期、第3期では、幅広い年齢層を網羅するため1万人以上を対象とし、大規模な集団での治験を通して予防効果を検証するという。
6月13日にアストラゼネカとの合意書に署名したイタリアのスペランツァ保健相は、「新型コロナウイルスに対する最終的な解決はワクチンだ。しかし、ワクチンは世界にとっての善であり、数少ない者たちの特権ではなく、全ての人々の権利である」と強調。コンテ首相も「慎重に対処しなければならないが、オックスフォード大学のプロジェクトは、最も将来性がある」との期待を表明した。
首相や閣僚のこうした発言を受けて、イタリアの各日刊紙は翌14日、「初秋には最初のワクチンが届く」(「コリエレ・デラ・セラ」紙)、「秋には1500万回分のワクチンが届く」(「ラ・レプブリカ」紙)などと報じた。ワクチンは、まずは医療従事者や60歳以上の高齢者などを対象に接種される予定だという。一方、第2期、第3期の臨床試験で有効な結果が確認されなかった場合、「大きな金融(投資)リスクになる」と懸念する声もある。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)