新型コロナウイルスの終息を祈ったローマ教皇フランシスコとWCRP/RfP(海外通信・バチカン支局)
世界各地で終息への祈り
インドネシアの宗教省も5月14日、「人類の友愛高等委員会」からの呼び掛けに応え、「新型コロナウイルスの終息を祈り、断食し、愛徳を実践する世界日」を首都ジャカルタで執り行い、国内の仏教、カトリック教会、儒教、ヒンドゥー教、イスラーム、プロテスタント教会の指導者たちが参加した。国営と民放のテレビ局が式典の模様を放映。インターネットでも全土に中継された。
ジョコ・ウィドド大統領は式典にビデオメッセージを寄せ、「私たちにとって、周囲を見渡し、兄弟姉妹を助け、友人に手を差し伸べ、私たちの国が担う(新型コロナウイルスという)重荷を共に担ぐ時が来ている」とアピール。上智大学(東京・千代田区)、ロンドン大学、米ジョージタウン大学などでイスラーム学を教えてきたキアイ・ハッジ・ナザルッディン・ウマール教授は、「新型コロナウイルスは、全人類の問題だ。現代世界で最も危機的な状況にあって、全ての人々が自らの倫理、宗教的信条に沿って互いに助け合い、支え合っていくように誘(いざな)われている」と述べた。
同国最大のイスラーム共同体「ナフダトゥル・ウラマー」の指導者であるキアイ・ハッジ・ヤハヤ・チョリル・スタクフ師は、「全ての人々が、致命的な感染症を引き起こすウイルスの標的になっている。私たちは、それぞれの信じる宗教の霊的な力によって、皆が同じ人間としての天性を持っているという意識を、より強くしていかなければならない」と主張。ジャカルタ大司教のイグナチウス・スハルヨ・ハルジョアトモジョ枢機卿は、「国内外に住むインドネシア国民が、一致の精神と真の友愛を育み、ウイルスに感染した人々との連帯を深めることができるように」と祈った。
集団礼拝が禁止されていないパキスタン・ファイサラバードでも同日、イスラーム、キリスト教やシーク教の指導者が、神父、さまざまな分野の活動家、報道関係者、一般信徒らと祈りを捧げるとともに、聖歌を歌い、平和と希望の燭台(しょくだい)に点灯した。この式典が開催されたカトリック司教館のイドリアス・レフマット司教は、「祈り、断食、嘆願の実践によって、感染拡大の危機を克服することができる」と語り、「この危機に対して諸宗教が一致を保っていくように」と願った。
イスラーム指導者のマウラナ・ムバシャール師は、「私たちはそれぞれ違った信仰、民族、言語だが、今日は、新型コロナウイルスに苦しんでいる貧者たちを、愛徳の実践によって支援することを誓い合った」と説明。「神は唯一であり、私たちが助けを必要とする人々を支援するために一致することを望まれている」と語った。
ロシア正教会の多くの聖職者たちも、人類の友愛高等委員会の提案に賛同して取り組みを進めた。この中で、チェチェン共和国のラムザン・カディロフ大統領(ムスリム)は、「今日、世界でさまざまな信仰を持つ人々が共に祈っていると確信している。私たちは、新型コロナウイルスの世界的な流行と、感染拡大がもたらす危機を克服できるよう神に祈る」と述べた。ロシアのイスラーム評議会のルーシャン・アバソフ副議長(ムフティ=イスラームの指導者)は、「ローマ教皇フランシスコの呼び掛けに応え、私たちは心からこの提案に賛同し、共に祈る」と考えを明かした。
インドにある多くのカトリック教区、特に、アルナチャル・プラデシュ州とマディヤ・プラデシュ州では、ヒンドゥー教徒、仏教徒、ジャイナ教徒、キリスト教徒、ムスリム(イスラーム教徒)が共に祈った。ミアオ仏教寺院(アルナチャル・プラデシュ州)のナリンドラ・ビック師は、「私たちは、目に見えない敵と闘っており、私たちの唯一の武器は祈りだ」と表明。スリランカでは、若者たちが中心となり、同嘆願の日の取り組みを推進した。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)