イランに対する経済制裁の停止を――WCRP/RfPイタリア委員会もアピール(海外通信・バチカン支局)

世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)イタリア委員会、人権擁護のための欧州女性協会、世界カトリック女性団体連盟などの代表者は4月1日、イランへの経済制裁を即時に停止し、医療支援物資が流通するよう求める公開書簡を発表した。

同書簡は、イランの国家最高指導者であるハメネイ師、欧州連合(EU)のジョセップ・ボレル外務・安全保障政策上級代表(外相に相当)、欧州議会のダヴィド・サッソリ議長、イタリアのセルジョ・マッタレッラ大統領に宛て送られた。

イランでの新型コロナウイルス感染者は10日現在、6万6220人に上り、米国やスペイン、イタリア、ドイツ、フランス、中国に次ぐ。死者も4000人を超えており、イランの被害拡大の要因は、2018年に米国のトランプ政権が「イラン核合意」からの離脱を表明して以降、イランが経済制裁を受け、医療システムが脆弱化(ぜいじゃくか)して対処できないためといわれている。

同書簡では、イランが感染拡大防止に必要な最低限の医療支援を受けられていないと説明。イラン国民が薬品、医療機器、治療にアクセスする権利は、国連憲章に定められた基本的人権であり、「人道活動を侵害するあらゆる制裁は停止されるべきで、国家が医療崩壊や自然災害を防ぐために、必要な施設や物資を求めてアクセスする権利は認められなければならないと、国際司法裁判所も定めている」と伝えている。

ベルギー・ブリュッセルを拠点に、世界の120を超えるパートナー団体で構成されるカトリックの国際平和運動組織「パックス・クリスティ・インターナショナル」(「キリストの平和」の意)も3月30日、「新型コロナウイルスは世界的に流行しており、これは、米国政府のイラン、シリア、ガザ(パレスチナ自治区)に対する経済制裁がただちに停止されることを求めるものだ」と記した公開書簡を発表。また、世界教会協議会(WCC)、米国キリスト教協議会、ACT同盟(120カ国以上の145を超えるキリスト教諸教会や組織で構成される救援団体)も4月9日、同ウイルスを「人類に共通の敵」とし、世界レベルで連帯、協力し、最も傷つきやすい人々に対する特別な配慮と、彼らの危機的状況を改善するため迅速な行動が必要と訴える合同書簡を公表し、「イランに対する経済制裁を解除」するようにと訴えた。両書簡は、トランプ米大統領に宛て送付された。

ローマ教皇フランシスコは12日、バチカンのサンピエトロ大聖堂で、参加者のいない復活祭のミサを司式。その様子は、インターネットを通して世界に配信された。その後、世界に向けて公表されたメッセージの中で教皇は、「世界の現状(新型コロナウイルスの世界的流行)を考慮し、国民に対して十分な医療支援を提供できない国に対する経済制裁を軽減するように」と述べ、経済的に貧しい開発途上国が抱える負債を「軽減、あるいは消却する」必要性を訴えた。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)