本会支援の「カンボジア国立仏教研究所」創立90周年 記念式典に庭野会長が祝辞寄せ
カンボジア仏教研究所九十周年に寄せて 庭野日鑛会長の祝辞(要旨)
本会と仏教研究所とのご縁は、一九九五年に遡(さかのぼ)ります。カンボジア宗教省、シャンティ国際ボランティア会からの要請を受け、本会は、開祖・庭野日敬が九十歳を迎えた記念事業として、仏教研究所再建の建設費を支援させて頂きました。シャンティ国際ボランティア会、WCRP(世界宗教者平和会議)、本会が協力して、仏教経典、一般書籍など、クメール語書籍の復刻も進められました。
こうした支援活動は、「本会一食平和基金」によって行われたものです。この基金は、「一食を捧げる運動」を実践する本会会員の浄財によって運営されています。「一食を捧げる運動」とは、一日三回の食事の中で、月に何回か一食を抜いて、食費分のお金を献金する運動です。
会員は、一食を抜くことによって、自らも空腹の苦の一端を味わい、祈りを込めながら献金しています。「援助する側」「援助される側」という意識ではなく、皆が兄弟姉妹という自覚に立って、自分のできるお手伝いをさせて頂いているのです。
二〇〇二年十月、「カンボジア仏教研究所第二期工事落成式」が行われました。私も出席させて頂きました。同じ仏教徒として、仏教文化の再建に関われることは、大変光栄なことであり、有り難いことでありました。
一九七〇年代後半、ポル・ポト政権によって、カンボジアの仏教界は壊滅的な打撃を受けました。約六万人いた僧侶は、約三千人に減り、仏教書も九十九パーセントが焼き捨てられたと伝えられています。
様相は異なりますが、日本も第二次世界大戦末期、広島と長崎に原子爆弾が落とされ、二十万人を超える人々が亡くなりました。また無差別の空襲を受け、各都市が焼け野原になりました。しかし、日本は、国民の努力によって、先進国の仲間入りをするまでになりました。カンボジアも見事な復興を遂げるに違いありません。
仏教の象徴とされる蓮華の花は、泥水の中からしか、立ち上がってこないと言われます。また蓮華は、泥水が濃ければ濃いほど、大輪の花を咲かせます。泥とは、いわば直面している諸課題になぞらえることができます。人間は、困難な状況があるからこそ、協力し合い、工夫を凝らして、これまでにない大きな力を発揮するのであります。
特にカンボジアは、仏教が国教であり、国民の大半が仏教徒です。万人の救いを目指す釈尊の教えは、さまざまな宗教の中でも、最も寛容で、平和なものであります。豊かな精神文化が根づいた、他の国の手本となる国へと発展していかれることを心から念願致します。
仏教研究所は、カンボジアにおける精神文化の根底を為す仏教の復興、普及という点で重要な役割を担っています。諸活動が一層充実していくことを願ってやみません。