ミャンマーの紛争停止を諸宗教者と共に カトリック・ヤンゴン大司教が呼び掛け(海外通信・バチカン支局)
「ミャンマー・シャン州ラーショーやラカイン州などで続く紛争で、無実の人々が強制疎開を余儀なくされ、虐殺され、暴力を受けており、そうした悲惨なニュースが報じられない日はない」。カトリック教会ヤンゴン大司教であるチャールズ・ボー枢機卿はこのほど声明文を発表し、国情をそう指摘した。こうした悲惨な現状に対し、同枢機卿は「ミャンマーにおける無実の市民に対する残虐行為を停止させるために、諸宗教者が声を上げるように」と呼び掛けている。
声明文に関するニュースは、ローマ教皇庁外国宣教事業部の国際通信社「フィデス」によって10月11日に配信された。声明文の中で同枢機卿は、諸宗教者が国内の紛争で起きている残虐行為に対して沈黙するのは、「犯罪行為にも匹敵する」とし、「私たちの祈りや儀式が、無駄な努力になってしまう行為だ」と沈黙を戒めている。ミャンマーには50万人の仏教僧、7万人の尼僧、1200人のキリスト教の聖職者、2000人の修道女が活動していることに触れ、平和を愛するミャンマー国民は自分たちの宗教指導者の声に耳を傾けるため、声を上げるようにと訴えている。
また、ボー枢機卿は、「ラカイン州のロヒンギャ、そして、カレン、シャン、モン、チンといった少数民族の受けている差別や暴行」に対し悲痛な思いを寄せ、彼らは極限的な貧困状況にある無実の人々であり、「生活必需品を求めて毎日、苦闘を続けている」と示して、「誰も彼らの経済的発展を促進しない」との懸念を表している。
また、「少数派のために戦っていると主張する武装勢力が、少数派の安全保障について無関心」であるとも主張し、「国軍を含む、あらゆる勢力に対して、この貧しく、無実の人々は、あなたたちの敵なのか、それとも、兄弟姉妹なのか」と問い掛けている。
「諸宗教指導者間における平和へ向けての対話が有する膨大な可能性」を信じるからこそ、枢機卿は諸宗教者へ「紛争に反対する声を上げるように」と求めている。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)