「公共の場で宗教シンボルを禁止すべきか」など海外の宗教ニュース (海外通信・バチカン支局)
スリランカで諸宗教者が共同で訴え ムスリムに対する報復の停止を
スリランカでは、キリスト教の復活祭の日(4月21日)に250人以上の死者を出したキリスト教の教会とホテルを標的とした連続爆破テロが発生したが、モスク(イスラーム礼拝所)やムスリムの商店、車、住居を狙った報復事件が相次いで起きている。報道によると、同国政府筋は、こうした報復が排他的な人種差別主義者や仏教原理主義者の扇動によって実行されているとの見方を強めているとのことだ。
アジアのカトリック司教協議会連盟議長で、ヤンゴン大司教(ミャンマー)のチャールズ・ボー枢機卿は、「カトリック教会は、スリランカのムスリム市民、難民、亡命者に対する報復と復讐の報に接し、深い憂慮を表明する」との声明文を発表。ボー枢機卿は、「約900件の報復事件が報告され、150人のムスリムが警察署に避難している」との報道に触れながら、「テロはさらなる憎悪をあおり、対立状況を拡散させることを目的としており、愛、友愛、和平、調和を敵と見なす」と注意を呼び掛けている。
カトリック・コロンボ大司教(スリランカ)のマルコルム・ランジス枢機卿は、上座部僧侶のイッタパネ・ダンマランカラ師と共同声明を公表し、「暴力行為の停止」を訴えた。
イスラームの全国組織である全セイロン・ジャミアトゥルウラマのムラヴィ・ファルーク師は、2人のキリスト教指導者と共に記者会見に臨み、「イスラーム共同体を代表して連続爆破テロに関しての許しを願い」、「テロ実行犯とイスラームとの間には何の関係もなく、彼らはイスラーム墓地に埋葬されなかった」と発言した。記者会見に同席したアシリ・ペレラ師(メソジスト教会)は、「全てのムスリムに、“あなたたちを許します”とのメッセージを送ります。テロを実行したのは、あなたたちではなく、あなたたちの名を使ったグループだったからです」と述べ、セイロン教会(プロテスタント)のディロラジ・カナガサバル師は、「イスラーム教徒がテロ実行者でないことを心に刻んでおいてください。私たちは、彼らと一致と愛の内に共存してきました」とアピールした。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)