WCRP/RfP日本委 仙台市内で「震災から9年目をむかえる宗教者復興会合」

この中で、庭野会長は、宗教者による復興支援には、「宗教的な智慧(ちえ)に基づいた提言や活動が不可欠」と強調。自然災害の被災者に対しては、よりきめ細かな触れ合いが必要であり、「そこに宗教者の役割がある」と述べた。

島薗代表は、震災発生直後から各宗教団体が被災者支援を展開する中、宗教宗派の枠を超えて情報を共有し、連携した活動の必要性が高まったことで宗援連が発足したと説明。宗教者には災害時により弱い立場に置かれる人々を支援する役割があると語り、同会合の議論が今後の宗教者による支援活動の力になると期待を寄せた。

一方、同連絡協議会の近藤会長は、建物の建設や道路の整備といった「目に見える復興」は進んだものの、被災者の心の傷は今なお癒えてはいないと指摘。心のケアなど宗教者の使命を果たしていきたいと語った。

村井嘉浩宮城県知事のメッセージの紹介に続き、基調発題として衆議院議員の吉野正芳前復興大臣が講演した。吉野氏は、全国に26カ所ある県外避難者の相談窓口を訪れ、被災者の現状把握に努める中で、傾聴の重要性を実感したと説明。「話を親身に聞くことで被災者の心の扉は開く。断られながら何度も被災者の元を訪ねる方々の姿を知り、ありがたいの一言に尽きます」と述べた。その上で、特に福島県では今後も継続した支援が必要であり、2021年に復興庁が廃止された後も、国会議員として、心のケアを重視した取り組みが「必ず続くように努力していきたい」と語った。

この後、14日まで『失われたいのちへの追悼と鎮魂』『今を生きるいのちへの連帯』『災害時における特別な配慮』『これからのいのちへの責任』をテーマにセッションが開かれた。

『今を生きるいのちへの連帯』のセッションでは、移動式傾聴喫茶「カフェ・デ・モンク」を主宰する曹洞宗通大寺の金田諦應住職が、同喫茶を通じて被災者の心に寄り添う傾聴活動を紹介。「釜石支援センター望」の海老原祐治代表はコミュニティーづくりの重要性を訴え、復興公営住宅での取り組みを発表した。一般財団法人「ふくしま百年基金」の山﨑庸貴代表理事は、草の根レベルで福島の復興に尽くすNPO法人などへの支援を説明した。

他のセッションでは、求められる宗教団体と行政の連携、地域文化や伝統芸能を通じた支援のあり方などが議論された。閉会のあいさつに立った同日本委の植松誠理事長(日本聖公会首座主教)は、宗教者としてこれからも被災地に寄り添い、共に歩むことを誓った。

◇MEMO
東日本大震災
2011年3月11日午後2時46分に三陸沖を震源とする地震が発生し、国内観測史上最大となるマグニチュード9.0を記録した。直接死者数は1万5897人、行方不明者は2533人、震災関連死者数は3701人に上る。また、震災に伴い東京電力福島第一原子力発電所の事故が発生。原発から30キロ圏内の市町村に一時、避難指示が出された。震災発生から8年、福島県民を中心に今も約5万2000人が避難生活を続けている。

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