核軍拡競争の再燃を憂慮する米国のカトリック教会(海外通信・バチカン支局)
米国のトランプ政権は2月1日、1987年にレーガン米大統領とゴルバチョフソ連共産党書記長によって調印された中距離核戦力(INF)全廃条約の破棄を表明し、これを受けて、ロシアのプーチン大統領も翌2日、同条約からの離脱を発表した。
核開発競争の再燃につながる、こうした国際情勢に対し、米国カトリック司教会議は、「正義と平和委員会」のティモティー・ブロリオ議長(大司教)名により、「米国政府がINF全廃条約からの離脱を表明したことを残念に思う」とする声明文を公表した。バチカンと世界のカトリック教会からのニュースを専門に伝えるネットサイト「イル・シスモグラフォ」が5日に伝えた。
声明文の中で、米国カトリック司教会議は「INF全廃条約が30年以上にわたり、米ロ両国の核軍縮に貢献してきた」とし、今回の米国の破棄の表明と、これに対するロシアの離脱という反応に触れながら、こうした判断が、新たな核軍拡競争をもたらすと憂慮の念を表した。その上で、「世界のカトリック信徒と善意の人々」という言葉を使いながら、彼らに向けて、「核軍縮がより一層進むため、世界各国の首脳による真摯(しんし)な努力がなされるように祈りを捧げてほしい」と呼び掛けている。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)