葬儀の意味と宗教者の役割を考える 教団付置研究所懇話会第17回年次大会

宗教情報センターの桑原氏

次いで、宗教情報センターの桑原氏が『「真如苑の葬儀」 時代への対応の一例として』をテーマに発表に立った。

この中で、調査内容に触れながら、その結果から浮き彫りになった昨今の特徴として、葬儀と初七日法要の同日執行や法要自体が簡略化される「時間の短縮」、親族以外の参列者がないなどの「少人数化」、通夜を省略した葬儀や戒名を望まずに俗名で葬儀を行うなどの「形式の変化」の三点を挙げた。

この背景には、合理性を求める社会の流れがある。また、地縁・血縁の希薄化、核家族化、経済的な事情による葬儀へのコスト意識があるとした上で、「これまでにあまりない多様な葬儀のあり方、また、それぞれのニーズに理解を示しながら、宗教者は、より柔軟に信仰へと結びつけていくことが大切になる」と強調。宗教者は、人が亡くなってから関係を結ぶのでなく、生前の日常から親しみと信頼を育むことが求められると語った。

浄土宗本願寺派総合研究所の冨島氏

この後、日本の伝統仏教からの研究報告もなされた。

『一回性の弔いから、連続性の弔いへ』と題する発表の中で浄土宗本願寺派総合研究所の冨島氏は、近年、葬儀が簡略化、小型化し、三十三回忌や五十回忌を行わずに、年忌法要の弔い上げが早まる傾向を報告。その背景の一つに、伝統的な儀礼儀式の意味が理解できず、「葬儀は不要なのではないか」との疑念を抱く人々の増加があると指摘した。

一方、葬儀には本来、故人を偲(しの)び、残された人々が悲しみを共有する意味合いがあるとし、葬儀や年忌法要といった場は、肉親や親族、知人など残された人々が故人に導かれて参集し、新たな関係性を結ぶ前向きな機会であると説明。こうした葬儀の意義を日頃から丁寧に伝え、現世の人と故人との関係性を結び直す役割を宗教者が担うことで、弔いの場が大切にされていくとの見解を示した。

大本教学研鑽所の森氏

最後に、大本教学研鑽所の森氏が『出口王仁三郎が解く霊魂観―葬送儀礼と追善供養は、家族・存続の極めて大切な営み―』をテーマに発表。大本の出口王仁三郎教祖が著した教典『霊界物語』を引用し、霊界と霊魂は存在しており、人の死は、「肉体と本体である精霊(霊魂)とが分離して永遠に生きて栄える霊界(死後の世界)への誕生」と述べた。その上で、大本では死は全ての終わりではなく、現世を生きる子孫が霊界の祖先に対し真心の追善供養をすることが重要になると語った。