WCRP/RfP日本委「平和と和解のためのファシリテーター養成セミナー」最終回 水俣病の経緯学ぶ

エコパーク水俣親水緑地にある「水俣病慰霊の碑」を訪れ、説明を聞く参加者

世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会・和解の教育タスクフォースによる「平和と和解のためのファシリテーター養成セミナー」(全8回)の最終回が、11月24、25の両日、熊本・水俣市で開催された。同日本委理事の庭野光祥次代会長を含む同タスクフォース運営委員のメンバーや研究者、学生ら43人が参加した。

「ファシリテーター」とは、グループや組織が問題解決や合意形成、学習などを行う際、中立的な立場で人々の意見を引き出しながら目標の達成に向けて支援、促進させる人を指す。同タスクフォースは、日常生活で生じる問題から国際レベルの紛争まで、さまざまな対立を対話によって乗り越え、和解をもたらす人材の育成を目的に、昨年7月に同セミナーをスタート。これまで『違いをみつめる』『見方をかえる』『耳をかたむける』『他者をうけいれる』『つながる/つなげる』『流れをつくる』『外へふみだす』をテーマに掲げ、国内外でワークショップを行ってきた。

水俣市では1953年ごろから、チッソ水俣工場の排水に含まれていたメチル水銀により、四大公害の一つである「水俣病」が発生。汚染された海や川の魚介類を食べた人々が手足や口周辺のしびれをはじめ、言語障害、視野狭窄(きょうさく)、運動障害、聴力障害といった神経機能の障害に見舞われ、多くの人が命を落とした。さらに、地域経済の大半をチッソに依存していたこともあって、患者などの被害者側とチッソを擁護する市民の間で対立が生じ、地域コミュニティーが分断された。現在、同市は水俣病の教訓を生かし、住民間の対立や分裂を乗り越えて、地元の自然や文化に着目した取り組みを展開したことで、環境モデル都市として再生を果たした。

今回のセミナーのテーマは『行動をおこす』。参加者は24日、熊本大学准教授の石原明子氏から、『水俣病の概要と地域の分断――自分ならどう正義と和解をもたらすか』と題するセッションで話を聞いた。

石原氏は、水俣病の概要を説明し、市民が分断された対立構造に言及。被害者の救済が最重要である一方、チッソ水俣工場により生計が成り立つ多くの住民を現実的に保護する必要性もあったと指摘した。「同じ出来事でも、立場によって見えているものは違う」と語り、対話を通じて対立や矛盾を超え、両者が協力し合える新たな関係を構築する大切さを強調した。

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