紛争地域での平和構築とは WCRP/RfP日本委がフィリピンで「平和と和解のためのファシリテーター養成セミナー」
和解の教育タスクフォース運営委員 松井ケティ清泉女子大学教授に聞く
ファシリテーター養成セミナーでは、対立する二者を和解に導く「仲介者」や「調停者」になるためのスキルを学びます。そのスキルとして求められるのは、対話を通して双方のニーズを理解し、双方が互いのニーズに歩み寄れるよう触れ合うことです。そのためには、対立する二者、それぞれの立場に立って考えることが必要になります。
同時に、和平を実現するには、対立が生じている問題への理解も重要です。ただ、紛争地では容易なことではありません。例えば、民族同士の対立がある地域で暴力事件が起きた時、それが大きな問題の氷山の一角に過ぎない場合がほとんどです。表面化していないだけで問題はたくさんあり、一つ一つの事象に対処しながら根本的な要因に目を向けていかない限り、類似の事件や問題を阻止することはできません。仲介者には、対話を重ねながら、隠れた部分の問題やその原因をより正確に把握するという粘り強いアプローチが必要になるのです。
私は、MPIのトレーニング講師をさせて頂いていますが、そのトレーニングには、神父やフィリピンの政府関係者など多様な人々が参加しています。政府には和解のための専門機関があり、その職員は、平和のためには自分の命を捧げても構わないというほどの使命感を持って働いています。
また、バチカンは、第二バチカン公会議で諸宗教対話の重要性が示されて以降、諸宗教対話を目的に神父をフィリピンに派遣しています。その中の2人は活動中に暗殺されましたが、セバスチャーノ・ダンブラ神父は赴任中に一度イタリアに戻されたものの、使命感から再びミンダナオに渡り、自身が設立した「シルシラ」という財団で今も活動を続けています。平和への情熱を持ち、失敗しても諦めずに和平に取り組む人たちがこの地に集まって来ているのです。
平和活動は成果がすぐに出るものではありません。私自身も平和教育に取り組む中で、事が思うように進まないジレンマや葛藤がありますが、そんな時は人類学者のマーガレット・ミードの言葉を思い出すようにしています。「思慮深い献身的な市民の小さなグループが世界を変えられることを決して疑ってはならない。それはまさに起こったことなのだ」。とても励みになる言葉です。同じ志を持つ仲間を作ること、それがとても大事だと感じています。