『統治と腐敗』をテーマに「行動の倫理」会議 光祥次代会長がスピーチ

スピーチを行う光祥次代会長

また、経済的な利益ばかりが優先され、規範となる「倫理」が軽視された現代では、世界の諸宗教の智慧(ちえ)が必要になると強調。「一人ひとりが自らの信じる宗教に基づいて心を清め、生き方を見直すために協働すること。宗教者が対話し、共同体に属する人々の中に倫理観を育てること。それが、“燃え盛る火宅”から抜け出すための唯一残された方法」と述べた。

このほか、2日間の会議では、『(政治の)腐敗と共通善』『タックスヘイブン(租税回避地)と違法な資金の流れ』などの会合が実施された。

この中で、金融機関の担当者や為替相場の安定化などを推進する国連機関の関係者らから、世界中のタックスヘイブンにある金融資産は3~4兆ドルに上ると報告され、税金が本来の租税地に支払われないことでその国や地域に経済的な損失が生じ、腐敗を誘因する可能性が高いことが示された。

また、複数のキリスト教指導者が神学的見地から、汚職などの不正に手を染めないよう、物欲を控えて精神の充足を求め、日々に感謝して過ごす大切さを説示した。

光祥次代会長はドイツ・ミュンヘン北西部にあるダッハウ強制収容所跡地を見学

会議に先立つ19日、光祥次代会長はドイツ・ミュンヘンの北西部に位置する「ダッハウ強制収容所」の跡地を訪れた。

同収容所はナチス支配下の1933年にドイツで最初に造られた強制収容所。ユダヤ人のみならず、反ナチスを主張する人々のほか、身体障害者や性的マイノリティーなど20万人以上の人々がこの地で強制労働に従事させられた。45年に米軍によって解放されるまで、虐待や栄養失調、伝染病などにより3万人を超える人々が犠牲になった。

光祥次代会長は、復元された、収容者が寝泊まりするバラックや毒ガス室、焼却炉などを見学。「人間は、全体主義や戦争といった異常な事態の中で、倫理観を持って行動する機会を奪われた時、善悪について自ら考えることを放棄し、誰もが残虐な行為に及んでしまう可能性があるのだと考えさせられました。こうした歴史を直視し、自らの戒めとして心に留めておく必要があると感じています」と感想を語った。

ダッハウ強制収容所で犠牲となった人々を追悼するモニュメント。奥には、収容者が身体検査を受けた棟が建つ