日本にもある児童労働 実態調査を行うACEがセミナーを開催
昨年12月、茨城県で15歳の少女が工場の屋根に設置された太陽光パネルの点検作業中に転落死する事故が発生した。日本では義務教育期間にある15歳未満の労働、18歳未満の「危険有害業務」が原則禁止されているが、少女の事故は、危険有害業務によるものだった。労働基準法に違反する上、日本が批准する国際条約(ILO182号条約)の「最悪の形態の児童労働」にもあたるという。国内にもこうした児童労働がある現状を広く知ってもらおうと、認定NPO法人「ACE」(エース)が6月18日、東京・千代田区の参議院議員会館でセミナーを開催。国会議員ら55人が参加した。
ACEは、インドやガーナなど、児童労働が大きな問題になっている地域で、危険な労働から子供を守り、教育を受けられるように支援する団体。現在、国内の児童労働の実態調査も行っている。
セミナーの冒頭、あいさつに立った岩附由香代表は、実態調査に乗り出したきっかけは2015年、国連で採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)に、「2025年までに児童兵士の募集と使用を含むあらゆる形態の児童労働を撲滅する」という項目が設定されたことと説明。そのためには、見えにくい国内の児童労働を明らかにし、実態を把握する重要性を強調した。
続いてアドボカシー事業オフィサーの太田まさこ氏が調査の中間報告を行った。警視庁発表の「児童虐待及び福祉犯の検挙状況」によると、2015年の福祉犯による被害者(子供)数は6235人に上り、この数は、違法な労働に関わった子供の数に相当すると説明。児童労働者全体の実数は不明としながらも、国際労働機関(ILO)が昨年初めて発表した「高所得国における児童労働者の割合」に従って試算すると、日本の児童労働者数は17万4000人に及ぶと語った。
さらに、子供たちが危険有害な労働に巻き込まれる背景には、家庭の貧困や虐待、学校でのいじめや不登校、引きこもりや自傷行為といった問題があり、複合的な影響を受けている場合も多いと指摘。「子供に関する課題と児童労働には大きなつながりがある」と語った。
また、法の目をかいくぐり、形を変えて営業を続ける「JKビジネス」が児童買春の温床となっているとし、こうした労働に従事する子供たちが、「保護」の対象ではなく、「補導」されている現状に疑問を呈した。