核兵器禁止条約を考える――日本の対応をめぐって WCRP/RfP日本委などによる連続講座・第2回
「核の脅威削減」に向けた連続講座(全4回)の第2回が5月27日、明治学院大学白金キャンパスで開かれた。日本パグウォッシュ会議、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会、明治学院大学国際平和研究所(PRIME)の共催によるもので、核を巡る近年の国際情勢を学び、核の脅威を取り除くための取り組みを専門家と市民の対話を通して検討する。今回のテーマは『核兵器禁止条約を考える――日本の対応をめぐって』。約30人が参加した。
当日は、日本赤十字社長崎原爆病院名誉院長の朝長万左男氏と国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)国際運営委員の川崎哲氏が講演に立った。
2017年から日本政府は、核保有国、非核保有国双方の識者16人を招き、「核軍縮の実質的な進展のための賢人会議」を組織している。同会議のメンバーである朝長氏は、16人の識者が、核兵器の保有によって相手の核攻撃を抑えるとする「核抑止」政策に一定の効用を認めながらも、長期的には安定した安全保障につながらないという見解で一致していることを紹介した。
その上で、核抑止を肯定する派と即時に核廃絶を求める派の二つの両極端な潮流をつなぐために、信頼の醸成を図る「対話の場」が重要になると強調した。
さらに、「核兵器なき世界」の実現には、国家間で核兵器に関する監視・検証ができるシステムを構築し、廃棄などについても法的拘束力のある国際的な枠組みが必要だと語った。
続いて川崎氏は、これまで米、露、英、仏、中の5カ国を「核兵器国」と定め、5カ国以外の核兵器の拡散を防止した「核不拡散条約(NPT)」だけでは、核軍縮が十分に推進されてこなかったと指摘。その上で、安全保障の観点だけでなく、核の非人道性が重視された「核兵器禁止条約」が核廃絶に有効だと主張した。
現在、日本政府は同条約を批准していないが、条約国がいかなる場合にも核兵器に関与することを禁じている条文などを紹介し、今後、日本政府の取るべき対応を提案。「仮に条約を批准しなくても、条約の中で定められている『核兵器による被害者援助と環境回復』においては、日本にイニシアチブを発揮してもらいたい」と語り、被爆国である日本が果たせる役割を示した。
この後、日本パグウォッシュ会議代表の鈴木達治郎氏が司会を務め、パネルディスカッションが行われた。