第35回庭野平和賞贈呈式 庭野日鑛名誉会長 挨拶

5月10日に国際文化会館で行われた第35回庭野平和賞贈呈式の席上、庭野平和財団を代表し庭野日鑛名誉会長が挨拶に立った。以下に全文を紹介する。

名誉会長挨拶

本日は、第35回庭野平和賞の贈呈式に際し、文部科学事務次官・戸谷一夫様、駐日レバノン共和国大使館・総領事館領事部・橋本彩可様、日本宗教連盟理事長・芳村正德様をはじめ、多くのご来賓のご臨席を賜り、あつく御礼申し上げます。

今年度の庭野平和賞を、レバノンのNGOである「アディアン財団」にお贈りできますことは、大変光栄なことでございます。また、選考にあたられたノムフンド・ワラザ委員長様はじめ、庭野平和賞委員会の皆さまに深く敬意を表する次第であります。

ただ今、ワラザ委員長様から選考経過のご報告がありましたように、「アディアン財団」は、レバノンにおいて、和解と共生への先駆的な働きをされている団体であります。宗教が「対立の道具」とされている状況を深く憂慮し、諸宗教に共通する根源的な教えを伝えることを通して、自己と他者の宗教を正しく理解する取り組みを進めてこられました。私が、特に注目するのは、多様性を重んじる教育活動に力点を置かれていることです。

中国の古典に次のような言葉があります。「一年計画ならば穀物を植えるのがいい。十年計画ならば樹木を植えるのがいい。終身計画ならば人を育てるのに及ぶものがない」と。長期的な視点で国づくりを行うには、人の育成が最も重要という意味合いであります。「アディアン財団」が進める教育活動も、現時点のレバノンのみならず、20年後、30年後のレバノンを見据えて実施されているものであろうと思います。

青少年の頃に学んだことは、一人ひとりの心にしっかり刻まれ、その後の生き方に大きな影響を与えます。また、自己の内面だけにとどまらず、周囲の人々に対しても、言葉や行動となって伝わり、広がっていきます。時を経て、子孫に受け継がれることにもなります。だからこそ、何よりも、教育の中身が問われるのであります。