福島の実情を学ぶ WCRP/RfP日本委「平和と和解のための人材養成セミナー」

福島県内には今も帰還困難区域が残る

続いて、本田氏が「復興公営住宅における現状と課題」を説明した。昨年3月31日に原発事故による避難指示が解除されたものの、浪江町の居住者は700人程度で、住民登録する約1万8000人の帰還が進んでいない実情を訴えた。一方、同町近隣の仮設住宅から復興住宅への移転が進み、一人暮らしの高齢者や高齢者夫婦だけの世帯の孤立が深刻化していると述べ、新たなコミュニティーづくりが急務と指摘した。

翌29日、参加者は2班に分かれ、復興住宅の石倉団地(二本松市)と北沢又第二団地(福島市)を訪問。住民同士の心をつなぐワークショップとして、浪江町をはじめ双葉郡内の思い出の場所や特産品などを模造紙に書き込む「ふるさとマップ」の作成などを通して交流を深めた。

最終日の30日には「カリタス南相馬」の畠中千秋所長の案内で、避難指示区域となっていた浪江町内や、南相馬市鹿島区の仮設住宅を視察。浪江町営大平山霊園では、犠牲者185人の氏名が刻まれた「浪江町東日本大震災慰霊碑」を全員が手をつないで囲み、黙とうを捧げた。

参加者で福祉系専門学校の学科長を務める水戸教会の40代男性会員は、「地域や職場などの組織では、利害や人間関係から軋轢(あつれき)や対立が生まれます。どうすれば全員が納得し、かつ利益につながるかを念頭に置き、時間を掛けて話し合っていくことの重要性をセミナーを通して再確認できました」と感想を語った。

浪江町東日本大震災慰霊を参加者で囲み、黙とう