仏教と自死に関する国際シンポジウム(関東版) 国内外の仏教者、専門家が発表

遺族や高齢者、子供の心に寄り添う活動

曹洞宗総合研究センターの宇野全智専任研究員は、同宗の僧侶が取り組む、主に檀信徒の自死遺族を対象にした相談活動を紹介。面会や手紙での相談に当たるほか、葬儀や追悼法要を各寺が担い、その際に遺族の思いを受けとめるようにしていると話した。その上で、偏見や差別に苦しむ自死遺族の心情にも触れ、「周囲に知られないよう葬儀を済ませる遺族は少なくない。自死者に対する誤解を解き、遺族が安心して暮らせるよう専門機関と連携を図り、支援に当たりたい」と述べた。

曹洞宗月宗寺住職の袴田俊英住職が、同宗の取り組みを紹介した

一方、国内で自殺率のワーストを争う秋田・藤里町で、自死と孤立防止のサロン「よってたもれ」を開催する曹洞宗月宗寺の袴田俊英住職は、高齢者の自殺を誘発する心理状態を詳述した。この中で、三世代同居の大家族で、特に祖母の自死の割合が高いと指摘。「病気や足腰の衰えにより、看病や介護で家族に負担を掛けたくないとの自責の念から、死を思うようになる。孤立を防ぐとともに、高齢になっても、家族や世間の役に立てるという生きがいを示すことが重要」と語った。

シンポジウム終盤には、近年、深刻化する子供の自死が取り上げられた。18歳以下の子供への電話相談を展開するチャイルドライン支援センターの神仁代表理事(僧侶)は、思春期におけるいじめや、それに伴う自死の増加に触れ、その背景に自己肯定感の欠如が関係していると説明した。

自身が尊い存在であることを体感している子供は、人と比べる傾向もなく、他を尊重できると説明。「いじめ自殺」の問題を解決するためには、大人一人ひとりに、子供と同じ目線に立ち、子供たちの持つ生きる力(仏性)を信じ育んでいく姿勢が求められると話した。

また同シンポジウムでは、韓国やタイ、米国、スウェーデンなど、海外の仏教関係者や専門家が現地の状況や取り組みを発表。自死の危険因子とされる精神疾患に対し、座禅や瞑想、仏教を基にしたカウンセリングの有効性などが報告された。