『南北コリアの分断と統一』テーマに 時事問題市民学習会

共生に向け、優先すべきは何か

こうした現状を踏まえ、金氏は、北東アジアの安定には、両国の関係を改善し、友好を図っていかなければならないが、それは必ずしも「一つの国家になることではない」と主張。「例えば、旧ユーゴスラビア連邦のように、平和を模索するプロセスの中で両国間の自由な往来システムを回復し、格差を減らしていくことで統一国家的な機能の確立を果たせるのではないか」と述べた。

また、朝鮮半島における共生の展望に関しては、現在韓国に定住している3万人の「脱北民」の経験が北朝鮮理解には有効としながらも、韓国での暮らしに適応できず「再入北」する人もいると報告した。その理由の一つとして、韓国社会に蔓延(まんえん)する脱北民への差別や人権侵害を挙げ、80年代までの北朝鮮への敵対意識を高揚させる反共教育が背景にあると解説。90年代以降は、北朝鮮に対する融和政策(太陽政策)が推し進められ、統一の準備を進める教育に舵(かじ)が切られたが、今後はさらに、北東アジア全体の平和を模索する共生教育が必要と訴えた。

さらに、太陽政策を実施した金大中、盧武鉉両政権時代は、南北関係、日韓関係が現在と比較して良好だったと分析。北朝鮮に対し、対話か圧力かという二項対立の議論で交渉を進めるのではなく、外交交渉ではどちらも必要であり、大局から、より深い議論を展開していくことが不可欠と強調した。